気色(読み)キショク

デジタル大辞泉 「気色」の意味・読み・例文・類語

き‐しょく【気色】

心の状態が外面にあらわれたようす。顔色。表情。きそく。「気色をうかがう」

㋐あるものにいだく感じ。気持ち。気分。「爬虫類はあまり気色のよいものではない」
㋑病気などの身体的状態によってもたらされる気分。体調。容態。「気色がすぐれない」
㋒ある事柄に対する意向。内意。要望。
「さるにてもこれへ、と御―ありければ」〈平家・二〉
風や雲の動きに表れる大気のようす。きそく。
「風雲の―常に違ふことあり」〈続紀・元正〉
[類語]感情機嫌気分空気表情雰囲気感じ様子気配けはいムードアトモスフィア佇まいにおいじょう情感心情情緒じょうしょ・じょうちょ情調情操情念情動喜怒哀楽気持ちエモーション

け‐しき【気色】

物事のようす。自然界ありさま
「寺のなかの―は違ったものだと思ったよ」〈藤村破戒
何かをしようとする、また、何かが起ころうとする、きざし。けはい。「居座って、帰る気色も見えない」
表情や態度に現れた心のようす。顔色。「物思う気色」「気色をうかがう」
それとなく示される内意。意向。
春宮とうぐうよりも御―あるを」〈・桐壺〉
わずかに感じられるようす。ほんの少し。
「―にても漏り聞かせ給ふことあらば」〈・若菜下〉
上位者の受け。おぼえ。
「御―よきぬし侍りけり」〈著聞集・一六〉

き‐そく【気色】

きしょく(気色)」に同じ。
「仏法知りたる―し」〈徒然・八〇〉

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精選版 日本国語大辞典 「気色」の意味・読み・例文・類語

き‐しょく【気色】

  1. 〘 名詞 〙
  2. [ 一 ] 物の外面にあらわれた様子、有様。外形の表情。きそく。
    1. 物の外面の様子。有様。物の姿。
      1. [初出の実例]「馨香畏減凄凉雨、気色嫌傷晩暮風」(出典:菅家文草(900頃)一・翫秋花)
    2. 風や雲のたたずまいにあらわれた前兆。風や雲の動きに見える物のきざし。
      1. [初出の実例]「亦猶風雲気色、有于常」(出典:続日本紀‐養老五年(721)二月甲午)
      2. [その他の文献]〔春秋左伝注‐僖公五年〕
    3. 顔面にあらわれた表情。顔色。
      1. [初出の実例]「藪に捨てたる御頸を取挙げたるに〈略〉只元の気色(キショク)に見えさせ給へば」(出典:太平記(14C後)一三)
      2. 「長十郎の顔は晴晴した気色(キショク)になった」(出典:阿部一族(1913)〈森鴎外〉)
    4. ひとに対する態度。
      1. [初出の実例]「事とも思はざるきしょくして、御つぼの内へぞ引入れられける」(出典:曾我物語(南北朝頃)一〇)
    5. ( ━する ) 様子をつくろうこと。改まった顔つきをすること。また、その様子や顔つき。
      1. [初出の実例]「光頼卿笏取直し、気色(キショク)して」(出典:陽明文庫本平治(1220頃か)上)
  3. [ 二 ] 表にあらわれた心の内面の様子、有様。きそく。
    1. 感情の状態。気分。機嫌。気持。
      1. [初出の実例]「明雲は法皇の御気色(キショク)〈高良本ルビ〉あしかりければ、印鑰(いんやく)をかへしたてまつて、座主を辞し申さる」(出典:平家物語(13C前)二)
      2. 「王子大きに気色(キショク)をそんじ」(出典:浄瑠璃・用明天皇職人鑑(1705)一)
    2. ある事柄に対する意向。要望。内意。貴人について「御気色(ごきしょく)」の形でいうことが多い。きそく。
      1. [初出の実例]「さるにてもこれへと御気色(キショク)有ければ、参られたり」(出典:高野本平家(13C前)二)
    3. 他人(多く目下のもの)に対する気分。特に「御気色」の形で、気持を受ける側から、おぼえ、寵愛(ちょうあい)の意。
      1. [初出の実例]「木曾左馬頭、院の御気色(ごキショク)悪うなると聞えしかば」(出典:高野本平家(13C前)八)
    4. ( ━する ) 怒りや不快などの強い感情をおもてに表わすこと。また、その心。憤慨。怒気。
      1. [初出の実例]「后たちにくはしく申しければ、ともかくも御返事もなかりけり。御首をも参らせ給はず。みかど大きに御きしょくありて」(出典:御伽草子・熊野の本地(室町末))
    5. 病気など、身体的不調によって乱された気分。また、気分のすぐれないこと。きそく。やまい。病気。
      1. [初出の実例]「気色も段々に快う御ざるに依て」(出典:虎寛本狂言・武悪(室町末‐近世初))
    6. ( ━する ) 合図すること。自分の意志を人に伝えること。
      1. [初出の実例]「文安五年〈略〉令承仕燃指燭之後、向供僧、気色ス」(出典:醍醐寺新要録(1620))

気色の語誌

( 1 )「気色」は、呉音「けしき」と、漢音「きしょく」及びその直音化の「きそく」の三とおりの読みがなされる。「きそく」は平安後期以降用いられ、さらにやや遅れて「きしょく」が中世以降盛んに使用され、「きしょく」の多用に伴い、「きそく」は徐々に用いられなくなっていった。
( 2 )「けしき」が中古の仮名文学に多用され、和語のように意識されたのに対し、「きしょく」は漢語的な性質をもち、人の内面の状態そのものを表わすことが多い。→「けしき(気色)」「きそく(気色)」の語誌


け‐しき【気色】

  1. 〘 名詞 〙
  2. [ 一 ] 物の外面の様子、有様。また、外見から受ける感じ。
    1. 自然界の有様。目にうつる情景から感じられるけはい。物の様子。
      1. [初出の実例]「亦猶風雲気色。有于常」(出典:続日本紀‐養老五年(721)二月甲午)
      2. 「正月一日は、まいて空のけしきもうらうらと、めづらしうかすみこめたるに」(出典:枕草子(10C終)三)
    2. 顔にあらわれた表情。顔色。顔つき。また、人の容姿、態度、そぶりなどについてもいう。
      1. [初出の実例]「かくや姫のある所に至りて見れば、猶物思へるけしきなり」(出典:竹取物語(9C末‐10C初))
      2. 「悲しうあはれにおぼさるれど、けしきにも出だし給はず」(出典:宇津保物語(970‐999頃)俊蔭)
      3. 「敵よりも猶こはき女房 うはなりのいかり来にける其気色〈由己〉」(出典:俳諧・犬子集(1633)一一)
    3. 物事があらわれるけはい。きざし。兆候。特に出産の兆候をいうことが多い。
      1. [初出の実例]「いとたひらかに、男みこむまれ給へり。けしきもなくておはしつるほどにむまれ給へり」(出典:宇津保物語(970‐999頃)国譲中)
    4. すこしであるさま。わずかであるさま。いささか。→気色ばかり
      1. [初出の実例]「かの君もいといたくおぢ憚りて、『けしきにても、漏り聞かせ給ふ事あらば』と、かしこまり聞こえ給ひし物を」(出典:源氏物語(1001‐14頃)若菜下)
    5. いっぷう変わった趣。興味をそそるようなさま。風流なさま。また、風流心。通常、「けしきあり」の形で使われる。
      1. [初出の実例]「一院の上はけしきおはする御心にて」(出典:宇津保物語(970‐999頃)楼上下)
    6. あやしげな様子。ぶきみな感じのするさま。通常、「けしきあり」の形で使われる。
  3. [ 二 ] 外から観察することのできる、心の内面の様子、有様。
    1. 外からうかがうことのできる、感情の起伏きげん。気分。
      1. [初出の実例]「三郎なりける子なん、『よき御男ぞいでこむ』とあはするに、この女、けしきいとよし」(出典:伊勢物語(10C前)六三)
    2. 心中にいだく考えを内々に示すこと。また、その考え。意中。意向。
      1. [初出の実例]「ものいひつくべきたよりなかりければ、『いかなるたよりして、気色みせむ』と思ひて」(出典:平中物語(965頃)二七)
    3. 特別に目をかけること。寵愛。おぼえ。
      1. [初出の実例]「げに少し物しと思へれど、親の御けしき得給ふ人の御有様、いふべきにあらねば、うちも出でず」(出典:落窪物語(10C後)四)

気色の補助注記

中古以前の漢文体の資料はどう読んでいたか明らかではないが「続日本紀」の例は参考のため、「きしょく」の項と重複してあげた。→きしょく

気色の語誌

( 1 )「気色」の呉音読みによる語。和文中では、はやく平安初期から用いられているが、自然界の有様や人の様子や気持を表わす語として和語化していった。
( 2 )鎌倉時代以降、人の気分や気持を表わす意は漢音読みの「きそく」「きしょく」に譲り、「けしき」は現在のようにもっぱら自然界の様子を表わすようになった。それによって表記も近世になって「景色」があてられるようになる。→けしき(景色)


き‐そく【気色】

  1. 〘 名詞 〙
  2. ( ━する ) 外面に現われた様子。また、様子をつくろうこと。きしょく。
    1. [初出の実例]「心のままに、〈略〉きらめきあへりしきそくどもなど」(出典:大鏡(12C前)三)
    2. 「中門の廊へぞ出られける。そのきそくおほかたゆゆしうぞみえし」(出典:平家物語(13C前)二)
    3. 「いかめしくきそくし胸(むな)いたをおしなで声作(こはづくり)してひかゆるに」(出典:浮世草子・新竹斎(1687)二)
  3. 心の状態。気分。機嫌。きしょく。
    1. [初出の実例]「御きそくよろしからねば」(出典:狭衣物語(1069‐77頃か)一)
  4. 他に対する気持や意向、要望。内意。きしょく。
    1. [初出の実例]「御前にまいり給て、御きそくたまはり給ければ」(出典:大鏡(12C前)四)
  5. 気分のすぐれないこと。病気。きしょく。

気色の語誌

漢語「気色」の漢音読み「きしょく」が直音化したもの。同様に「気色」から派生した「けしき」が平安初期から自然と人間の両方にわたって広く用いられたのに対し、「きそく」は平安中期を過ぎて、特に心内の気分や意向として用いられたが、鎌倉時代以降「きしょく」が一般化するにつれて衰えた。

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普及版 字通 「気色」の読み・字形・画数・意味

【気色】きしよく

顔色。〔子、勧学〕故に未だ與(とも)に言ふべからずして言ふ、之れを傲(がう)と謂ふ。~氣色をずして言ふ、之れを瞽(こ)と謂ふ。

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占い用語集 「気色」の解説

気色

人相学においては、顔の表面に現れる白い線のことを指す。「気色線」とも呼ばれる。線が現れている位置によって、何に関する問題が出ているのかを判断する。

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