日本大百科全書(ニッポニカ) 「条件つき確率」の意味・わかりやすい解説
条件つき確率
じょうけんつきかくりつ
n本のくじのうち当たりくじがr本ある。初めにAが、続いてBがこのくじを引くとする。Aが当たる確率はr/nである。Aが当たったときBの当たる確率は(r-1)/(n-1)であり、Aが外れたときBの当たる確率はr/(n-1)である。一般に、二つの事象E、Fに対して、Eがおこったという条件のもとにFがおこる確率をpE(F)と表し、条件つき確率という。前記のくじの例で、Aが当たるという事象をE、Bが当たるという事象をFで表せば
である。ただしĒはEがおこらないこと、すなわちAが外れるという事象を表す。
次に乗法定理を説明する。二つの事象E、Fに対して、E、Fが両方ともおこる場合の数をa、EがおこりFがおこらない場合の数をb、EがおこらないでFがおこる場合の数をc、E、Fが両方ともおこらない場合の数をdとする。そして総数N=a+b+c+d個の場合の一つ一つがおこる確率はすべて同じであるとする。このとき、E、Fが両方ともおこる確率をp=p(E∩F)と表せばp=a/Nである。次にEのおこる確率p(E)は(a+b)/Nであり、EがおこったときにFがおこる確率pE(F)はa/(a+b)である。したがって
すなわち、E、Fが両方ともおこる確率は、Eがおこる確率p(E)と、EがおこったときFがおこる確率pE(F)との積に等しい。この関係を乗法定理という。これは二つの事象に関するものであるが、m個の事象についての次の定理も乗法定理という。「m個の事象E1、E2、……、Emがあるとき、E1のおこる確率をp1、E1がおこったときにE2のおこる確率をp2、E1、E2が両方ともおこったときE3のおこる確率をp3、以下同様にp4……を定めると、E1、……、Emがすべておこる確率p(E1∩……∩Em)はp1p2……pmに等しい」。とくにE1、……、Emが独立であれば
p(E1∩……∩Em)=p(E1)p(E2)……p(Em)
である。
初めにあげたくじの例で、Aが当たるという事象をE、Bが当たるという事象をFで表せば
したがって、くじを引くときは1回目に引く人が当たる確率と2回目に引く人が当たる確率は等しい。
[古屋 茂]