数学用語。偶然現象において,起こりうるそれぞれの可能性に対して確率を対応させようとするとき,その対象となる事柄が事象である。数学的には次のように記述される。例えばさいを投げる場合,それぞれの目が出るのはいろいろな偶然に支配される結果と考え,それら偶然をパラメーターωで表す。1の目が出たのはω1が支配した結果,2の目はω2が,……,6の目はω6が支配したものと考える。これらωを根元事象と呼び,根元事象の集合を事象という。正しいさいなら各ωに1/6の確率を与えることになる。偶数の目がでる事象は集合{ω2,ω4,ω6}であり,その確率は各根元事象の確率の和3×1/6=1/2である。起こりうる可能性が無限個ある場合でも,それが可算個であれば,根元事象ω1,ω2,……,ωn,……を考え,さいの場合と同様にそれらの集合としての事象やその確率を決めることができる。しかし,測定値の誤差のように偶然の値が連続量となる場合,数学的記述は複雑になる。パラメーターωの全体(それは非可算無限集合)をΩとし,Ωの部分集合の族で次の条件を満たすものをBとかく。(1)Ω∈B,(2)A1,A2,……,An,……がすべてBの要素なら和もBに属する,(3)A∈BならばAc=Ω-A∈B。このときBの要素を事象といい,事象AcをAの余事象と呼ぶ。また,二つの事象A,Bの共通集合が空であるときに,両者は排反(排反事象)であるという。事象Aに確率P(A)を与えて確率空間(Ω,B,P)が得られる。それはP(Ω)=1である測度空間にほかならない。このような空間のうえでは無限個の事象や極限なども含め複雑な偶然現象を数学的に厳密に扱うことができる。
執筆者:飛田 武幸
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…次いで18世紀に入り,ヤコブ・ベルヌーイの遺稿が,甥のニコラウスによってまとめられ,《推測法》(1713)として出版されたが,そこには順列,組合せを用いた確率の話が出てきて,しだいに確率論としての形態を整えてきたのであった。 ここでも創生期のように有限個の事象を扱った確率から話を始める。例えば,銅貨を投げるとき,それがゆがんでいないなら表の出る確率と裏が出る確率が同じであるとしてよかろう。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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