松前地図(読み)まつまえちず

日本歴史地名大系 「松前地図」の解説

松前地図
まつまえちず

八五×一〇五センチ 自筆図無彩 加藤肩吾 寛政三年頃 北海道大学附属図書館蔵

解説 蝦夷島・カラフト島・千島列島の地図で、「松前藩侍医加藤寿図之」と記し加藤の号である「九皐堂」の図書印がある。加藤肩吾(寿)は江戸昌平黌に学び、寛政年間にはロシア使節ラクスマンやイギリスの航海者ブロートンとの応接掛としても活躍した松前藩の医師。この絵図は寛政初年までに行われた松前藩の地理調査の成果を集大成したものと思われ、蝦夷島はやや右肩上がりながら従来の国絵図よりは格段に見事に描かれ、クナシリ島・エトロフ島・シコタン島・ハボマイ諸島もほぼ正しい位置にそれなりの大きさで示されている(各島については「別に図あり」と記す)。北千島諸島は列島ながら島々の位置と名前のみが概略的に示されているだけである。カラフト島は南部のみが描かれ、アニワ湾の形は実際に近いのに全体の形が南北にではなく東西に延びているのは不思議である。この地図はラクスマン使節が根室越冬中に借写して持帰り、一八〇二年ロシア帝国地図部刊行の太平洋地図中に借用されている。ブロートンも寛政八年ヱトモ来航の際に加藤肩吾から写をもらい、津軽海峡から蝦夷島西岸を北上したときに利用しているが、蝦夷島北方に東西に横たわる小さなカラフト島に惑わされたようである。そのことは文化二年にロシア帝国地図部の太平洋地図を利用したロシアの航海者クルーゼンシュテルンも同様であった。この絵図の輪郭はその後蝦夷地の実用地図に発展して広く用いられたが、カラフト島については間宮図によって修正されていた。

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

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