ブロートン(読み)ぶろーとん(英語表記)William Robert Broughton

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ブロートン」の意味・わかりやすい解説

ブロートン
ぶろーとん
William Robert Broughton
(1762―1821)

イギリス海軍大佐。1762年5月22日イギリスで生まれた。母方祖父男爵。イギリス海軍に入り、1790年観測船チャタム号の艦長となり、アメリカ西北岸探検航海に参加。翌年11月、ニュージーランド東方800キロメートルの南太平洋にある火山島をヨーロッパ人で最初に発見し「チャタム諸島」と命名、イギリス領土とした。さらに、1792年11月、北米コロンビア川を遡って調査を実施。1793年巡洋艦プロヴィデンス号艦長に任ぜられ、1796年9月15日(寛政8年8月14日)室蘭沖に来航し松前藩役人と会見したうえで退去した。その後、マカオを根拠として日本列島沿岸の調査をおこなったが1797年プロヴィデンス号は沖縄宮古島沖で座礁しその後、小型船で調査を続行し1799年2月帰国した。『プロビデンス号北太平洋探検航海記』(久末進一訳・1992)は琉球朝鮮および日本の方言に言及し貴重な史料となっている。1821年3月12日イタリアのフィレンツェ死去。行年58歳。

[武内 博]

『吉町義雄著「ブロートンの蝦琉鮮日語例」(市河博士還暦記念会編『市河博士還暦祝賀論文集 第2輯』所収・1947・研究社)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ブロートン」の意味・わかりやすい解説

ブロートン
Broughton, Jack

[生]1704頃
[没]1789.1.8. ロンドン
イギリスのプロボクサー。本名 John Broughton。イギリスの第3代チャンピオン。初のボクシングルールであるブロートンルールを考案し,マフラーという近代ボクシングのグラブ原型を発明した。港湾労働者からボクサーに転向し,トム・パイプスとビル・グレッティングを制して王座を獲得した。名声が高まり,カンバーランド公ウィリアム・オーガスタス(四十五年の反乱の鎮圧者)が後援者となったが,1750年にジャック・スラックに敗れ,その支持を失った。1742年ロンドンのハンウェイ通りでボクシング・ジムを開き,死去するまで指導と運営に携わった。1743年に設定されたブロートンルールは,1838年にロンドン・プライズリング・ルールが登場するまで適用された。

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朝日日本歴史人物事典 「ブロートン」の解説

ブロートン

没年:1821.3.12(1821.3.12)
生年:1762
イギリス海軍軍人,探検家。寛政8(1796)年,プロヴィデンス号で北海道絵鞆(室蘭市)付近を測量。翌年,マカオで購入した補助スクーナーを伴って北上中,石垣島でプロヴィデンス号が座礁,沈没。スクーナーで絵鞆を再訪,松前藩士とも接触した。間宮海峡を北緯51度45分まで北上したが,湾だと信じて反転。朝鮮半島の釜山とおぼしき港に寄港。石垣島で救助に当たった島民の親切に感動し,西欧の好意的琉球人観の原型をつくるなど,初期の東アジア探検に貢献。その航海記付録には日本語,琉球語,朝鮮語の語彙集を掲載する。<著作>《A Voyage of Discovery to the North Pacific Ocean》(《Bibliotica Austoralia》中に復刻)<参考文献>須藤利一『異国船来琉記』

(春名徹)

出典 朝日日本歴史人物事典:(株)朝日新聞出版朝日日本歴史人物事典について 情報

デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「ブロートン」の解説

ブロートン Broughton, William Robert

1762-1821 イギリスの探検家。
海軍軍人。プロビデンス号艦長として北太平洋とアジア大陸沿岸の調査にあたる。寛政8年(1796)蝦夷(えぞ)地(北海道)内浦湾を測量,絵鞆(えとも)(室蘭)に寄港。翌年琉球諸島宮古島沖で艦が難破,那覇(なは)港をへて絵鞆を再訪した。1804年「北太平洋発見航海記」を刊行。付録には日本,琉球,朝鮮の語彙(ごい)が採録されている。1821年3月12日死去。59歳。

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