板返（読み）いたがえし

精選版 日本国語大辞典

いた‐がえし ‥がへし【板返】

〘名〙

① 板ぶきの屋根の板を、ふき直すこと。

※咄本・醒睡笑（1628）三「板がへしをせんと屋根葺(ふき)二三人やとひ出し」

② 玩具の名。小さな長方形の板をいくつも紙で蝶番(ちょうつがい)につなぎ、一方の端の板を持って下げると、板の表が次々に現われ、手を返すと、裏が次々に出てくるようにしたもの。

③ (②の絵が、繰り返し出るところから) 同じことを繰り返して話すこと。また、陳腐な表現や話。

※かた言（1650）五「たれもたれも云なれ聞ふれたる板返(イタガへ)しの秀句などは」

④ 板をひっくり返すように、敵を投げ倒すこと。また、ひっくり返ること。

※浄瑠璃・京今宮御本地（1678頃）二「まっかうにくる者のほろつけせんだんいたがへしつつぬきねぢくび人つぶて、さんざんに打ちらし」

⑤ 歌舞伎の小道具で首を板の裏に付けて置き、糸を引いて板を起こすと、首が出るような仕掛け。

※歌舞伎・戻橋脊御摂（1813）三立「板返(イタガヘ)しにて一巻を持ちたる忠正の首出る」

出典　精選版 日本国語大辞典