改訂新版 世界大百科事典 「林悌」の意味・わかりやすい解説
林悌 (りんてい)
(R)Im Che
生没年:1549-87
朝鮮,李朝中期の文章家。号は白湖,謙斎,楓江,嘯痴。羅州の人。秀才の聞えが高かったが,当時激しかった両班(ヤンバン)社会の党争を慨嘆し,官は礼曹正郎兼知製教で辞め,もっぱら名山に遊んで詩酒を友とした。その詩文は豪放快活,実生活でも逸話が多い。たとえば平安都事として赴任する途中,両班の体面など無視して名妓黄真伊の墓に詣で盛大な法事を営んで罷免されたり,死の床で〈中国をはばかり帝国と称しえない朝鮮などに生まれたのは痛恨事だから,自分が死んでも泣いてはならぬ〉と遺言したという。詩文集《白湖集》《浮碧楼觴詠録》や漢文小説《愁城誌》があり,また《元生夢遊録》は夢に托して現実批判を行って,〈夢遊録〉という小説形式の先駆となった。
執筆者:田中 明
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