日本大百科全書(ニッポニカ) 「柴舟模様」の意味・わかりやすい解説
柴舟模様
しばふねもよう
染織模様の一つ。柴舟は元来、宇治橋や水車などと同じく、宇治の景を表す際に描かれたもので、『新古今和歌集』には、「暮れてゆく春の湊(みなと)は知らねども霞(かすみ)に落つる宇治の柴舟」という寂蓮(じゃくれん)の歌がある。現存するもっとも古い作例としては、室町時代末から桃山時代初期の『扇面宇治川図』(笹間(ささま)家蔵)があげられる。しかしこの後、江戸時代の染織模様として描かれる柴舟は名所絵的なものより、むしろ感傷的な気分を表そうとしたものが多くみられる。尾形光琳(こうりん)の『円形図案集』(大阪市立美術館蔵)や、宝永(ほうえい)5年(1708)版『花陽ひるなかた綱目』などにみることができる。
[村元雄]