改訂新版 世界大百科事典 「梵卵」の意味・わかりやすい解説
梵卵 (ぼんらん)
サンスクリットの〈ブラフマーンダbrahmāṇḍa〉の訳。〈ブラフマー神(梵天)の卵〉の意味で,ヒンドゥー教において,宇宙開闢(かいびやく)の根源である最高存在とされるものの一つ。インドにおいて,宇宙創造に関しては,最古の文献である《リグ・ベーダ》以来さまざまな思想・学説が展開されているが,梵卵からの宇宙創造の説もその一つで,ヒンドゥー教の聖典である各種のプラーナ(〈古譚〉〈古伝話〉の意),とくに《ブラフマーンダ・プラーナBrahmāṇḍa-purāṇa》において詳細に論じられている。それによると,太初においては梵卵のみが存在し,次にこの梵卵から〈ビラート・プルシャVirāṭ-puruṣa〉と呼ばれる神秘的小児が誕生した。この小児が万物の根源であり,その一つ一つの毛穴からそれぞれ一つの宇宙が生じ,かくして無数の宇宙が生じたと説かれている。
執筆者:吉岡 司郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報