日本大百科全書(ニッポニカ) 「プラーナ」の意味・わかりやすい解説
プラーナ
ぷらーな
Purāa
ヒンドゥー教徒の伝える一群の聖典文献の総称。宗派的色彩が濃く、おおむねビシュヌ、シバ両派のいずれかに所属する。「プラーナ」の語は「いにしえの物語」を意味するが、これが特定の書物をさすようになったのは『アタルバ・ベーダ』以降とみられ、また現在のようなプラーナ文献が予想されるのはスートラ文献以降のことと推定される。いずれにせよ、きわめて長期間にわたって徐々に諸種のプラーナがつくられていったとみられる。言語、韻律その他の点で、とくに叙事詩『マハーバーラタ』とは共通性を示すが、内容的にはきわめて雑多であり、一貫性には乏しい。しかしビシュヌ神やシバ神についての神話や化身伝説、宇宙論、哲学的世界観、宗教儀礼(とくに祖霊祭)、社会制度、医学、文芸論など、種々の問題に幅広く言及しているので、プラーナ文献はヒンドゥー教の思想や文化の万般を知るうえで、資料的に大きな価値を有する。18の「大プラーナ」と同数の「副プラーナ」とがあり、前者には有名な『ビシュヌ・プラーナ』や『バーガバタ・プラーナ』が含まれている。
[矢島道彦]