プラーナ(読み)ぷらーな(英語表記)Purāa

日本大百科全書(ニッポニカ) 「プラーナ」の意味・わかりやすい解説

プラーナ
ぷらーな
Purāa

ヒンドゥー教徒の伝える一群聖典文献の総称。宗派的色彩が濃く、おおむねビシュヌ、シバ両派のいずれかに所属する。「プラーナ」の語は「いにしえの物語」を意味するが、これが特定の書物をさすようになったのは『アタルバ・ベーダ』以降とみられ、また現在のようなプラーナ文献が予想されるのはスートラ文献以降のことと推定される。いずれにせよ、きわめて長期間にわたって徐々に諸種のプラーナがつくられていったとみられる。言語、韻律その他の点で、とくに叙事詩マハーバーラタ』とは共通性を示すが、内容的にはきわめて雑多であり、一貫性には乏しい。しかしビシュヌ神やシバ神についての神話や化身伝説、宇宙論、哲学的世界観、宗教儀礼(とくに祖霊祭)、社会制度、医学、文芸論など、種々の問題に幅広く言及しているので、プラーナ文献はヒンドゥー教の思想や文化の万般を知るうえで、資料的に大きな価値を有する。18の「大プラーナ」と同数の「副プラーナ」とがあり、前者には有名な『ビシュヌ・プラーナ』や『バーガバタ・プラーナ』が含まれている。

[矢島道彦]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「プラーナ」の意味・わかりやすい解説

プラーナ
Purāṇa

ヒンドゥー教の聖典。もとは古譚,古伝説の意味。主題は (1) 宇宙の創造,(2) 宇宙の破壊および再生,(3) 神々および聖賢の系譜,(4) 人祖マヌに支配される長い期間,(5) 王朝の歴史の5項目といわれている。現在プラーナの代表的なものは 18種伝わっているが,前述の5項目のほかにも多数の神話伝説を含み,また哲学,宗教,祭式,習俗,政治,法制天文,医学,兵学などあらゆる主題を内包する百科全書的な文献である。古いものはおそらく3世紀以前につくられたが,後世にいたるまで次々とつくり続けられた。プラーナのうちでも『ビシュヌ・プラーナ』と『バーガバタ・プラーナ』はビシュヌ派のみならずインドの宗教,文化に多大な影響を与え,特に後者バクティ運動のバイブルとされた。 (→ウパプラーナ )  

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