内科学 第10版 「横隔膜下腫瘍」の解説
横隔膜下腫瘍(横隔膜の疾患)
横隔膜直下に形成される膿瘍であり,胸部,腹部および後腹膜の化膿性炎症に引き続いて二次的に生じる.通常膿瘍は右横隔膜と肝上面の間隙に貯留することが多いが,左横隔膜と胃あるいは脾臓の間に貯留することもある.原因としては虫垂炎の穿孔,腹部の手術が多いが,腸管穿孔による腹膜炎,胆囊炎,腎周囲膿瘍,肺炎,肺膿瘍なども原因となる.
診断
胸部X線写真では,膿瘍形成による横隔膜の挙上,併発する胸膜炎による胸水貯留および横隔膜の運動制限,膿瘍内ガスを反映する横隔膜下腔のガス像などがみられる.
臨床症状
症状としては,胸部,腹部,後腹膜の炎症性化膿疾患に引き続き起こる長期間の発熱,上腹部痛,食欲不振,体重減少などである.しかし,悪寒戦慄を伴った発熱,悪心,嘔吐,吃逆,胸痛,呼吸困難などで急激に発症する場合もある.また,横隔膜痛が出現することもある.
治療
治療は積極的な排膿と強力な抗菌薬の投与である.[鰤岡直人・清水英治]
■文献
鰤岡直人:胸部写真が正常な呼吸器疾患.フレイザー,呼吸器病学エッセンス: 清水英治,藤田次郎監訳, pp 1001-1012, 西村書店,2009.
Fraser RS, Neil C et al: Disease of the diaphragm and chest wall. In: Synopsis of Diseases of the Chest (3rd ed), pp 897-911, Elsevier, Philadelphia, 2005.
出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報