家庭医学館 「腎周囲膿瘍」の解説
じんしゅういのうよう【腎周囲膿瘍 Perinephritic Abscess】
腎臓(じんぞう)の表面をおおっている膜(被膜(ひまく))と腎臓の周囲にある筋肉の膜(ジェロタ筋膜(きんまく))との間にある脂肪の中に、膿(うみ)のかたまりができる病気です。
多くの場合、腎盂腎炎(じんうじんえん)(「腎盂腎炎(腎盂炎)」)などによって腎臓の組織(腎実質(じんじっしつ))が細菌に感染して、それが周囲の脂肪にまでおよんでおこる病気です。
しかし、全身の抵抗力が弱っていたりすると、からだのほかの部位の感染巣から、細菌が血流で運ばれて感染がおこること(血行性感染(けっこうせいかんせん))もあります。糖尿病の人は、この病気になりやすいといわれています。
[症状]
腎臓のあるあたりが痛み、浮腫(ふしゅ)(むくみ)や発熱などがみられます。
脂肪中にできた膿のかたまりが大きくなると、弾力のある腫瘤(しゅりゅう)(できもの)を手で触れることができるようになります。ここまで進むと、体重が減少し、全身が衰弱してきます。
[検査と診断]
発熱などの全身症状があり、腎臓のあたりを押したときの痛みや腫(は)れがあれば、腎周囲膿瘍が疑われます。
腹部のX線像を撮ってみると、腎臓の輪郭がぼやけています。血液検査では、白血球(はっけっきゅう)がきわめて増加しています。
超音波検査、CTスキャン、MRIなどの画像検査をすると、膿瘍のある部位や大きさがわかります。
超音波検査の画像を見ながら、その部分に細い針を刺して吸引し、膿があれば、診断が確定します。
なお、血行性感染の場合、尿は正常なこともあります。
[治療]
抗菌作用のある薬の使用(化学療法)と安静が治療の基本となります。
膿瘍の部位などがはっきりしている場合は、針を刺すか切開して、膿を取り除けば、急速によくなります。
また、原因となった感染巣の治療も並行して行なうことがたいせつです。