改訂新版 世界大百科事典 「欠神」の意味・わかりやすい解説
欠神 (けっしん)
absence
代表的なてんかん(てんかん)発作の一型で,純粋小発作,アブサンスともいわれる。痙攣(けいれん)を伴わず意識が突然消失し,突然回復する。軽い発作では意識が比較的保たれることもある。持続は数秒から20秒くらいで,1日に数回から十数回起きる。9歳から15歳ころまでの少女に多く,過呼吸で誘発されやすい。発作時には開眼しているが,大発作の不全型と異なって眼球上転つまり白目になることがなく,前方を凝視し,目が据わっていることが特徴的である。一般に身体的な動きは静止し,凍りついたように動かないが,眼瞼には3Hzの律動的な攣縮がかすかにみられる。脳波でみると,3Hzの棘(きよく)徐波結合が全般的に突然始まって意識が消失し,突然終わって意識が回復する。原因不明の本態性てんかんで,全脳にてんかん放電がいっせいに広がることから原発全汎てんかんに分類される。頻度は5%以下と少ないが,意識消失のみのてんかんということで同じ原発全汎てんかんである大発作と対比される。予後はよく,知能障害や性格変化をきたさず,エトサクシミドがよく効き,成長するにしたがい1/3が治癒する。しかし,1/3には大発作を併発する。なお,他の小発作群にはミオクローヌスや自動症を伴い,より複雑な病像を呈する。
執筆者:石黒 健夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報