改訂新版 世界大百科事典 「次亜ヨウ素酸」の意味・わかりやすい解説
次亜ヨウ(沃)素酸 (じあようそさん)
hypoiodous acid
化学式HIO。水溶液としてのみ存在し,ヨウ素I2の水溶液中に微量に存在する。
I2+H2O⇄HIO+H⁺+I⁻
きわめて弱い酸で,電離定数Ka=[H⁺][IO⁻]/[HIO]=2.3×10⁻11(25℃)程度。両性を示し,IOHとも表され,次のような解離も起こる。
IOH⇄I⁺+OH⁻,Kb=[I⁺][OH⁻]/[IOH]=3.3×10⁻10HIO+H⁺⇄I⁺+H2O
ヨウ素の水溶液と酸化銀,酸化水銀(Ⅱ)と混合し,不溶性の銀塩あるいは水銀塩をろ(濾)別して得られる。黄色ないし緑色の溶液。きわめて不安定で,分解してヨウ素とヨウ素酸HIO3を生ずる。また還元されてヨウ化水素HIとなるので,強い酸化剤となる。
2HIO─→2HI+O2
過酸化水素と反応して酸素を発生するとともにヨウ素を遊離する。酸化反応,ヨウ素化反応の試薬として用いられる。
次亜ヨウ素酸塩hypoioditeは水溶液中でのみ知られ,性質は次亜塩素酸塩とほぼ同じで,酸化力,漂白作用が強い。
執筆者:大瀧 仁志
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報