化学辞典 第2版 「塩化ヨウ素」の解説
塩化ヨウ素
エンカヨウソ
iodine chloride
【Ⅰ】一塩化ヨウ素(iodine monochloride):ICl(162.36).ヨウ素に塩素を作用させると得られる.α,βの二形があるが,いずれも透過光では赤色,反射光では黒色に見える単斜晶系結晶(α形は針状結晶,β形は板状結晶).いずれも原子間距離の異なる2種類のICl分子が交互に並んでジグザグの鎖状になっている.α形;I-Cl2.37,2.44 Å.β形;I-Cl2.35,2.44 Å.α形;融点27.2 ℃.密度3.86 g cm-3(0 ℃).β形;融点12.9 ℃.分解温度97 ℃.密度3.66 g cm-3(20 ℃,液体)(β形は,-10~0 ℃ のみで安定である),アルコール類,エーテルなどの有機溶媒に可溶.水では加水分解して,HIOとHClになる.潮解性はないが,空気中に放置するとI2O5となる.油脂のヨウ素価の測定用試薬(ウィイス(Wijs)法)として用いられる.皮膚をおかす.有毒.[CAS 7790-99-0]【Ⅱ】三塩化ヨウ素(iodine trichloride):ICl3(233.3).分子構造からは,六塩化二ヨウ素(diiodine hexachloride)I2Cl6ともいわれる.潮解性で刺激臭がある黄色の針状結晶で,図のように,2個のCl-I-Clが,2個のCl原子により橋かけされている.I2 に過剰の Cl2 を反応させるか,IClに Cl2 を反応させると得られる.エタノール,CCl4などに可溶.水では加水分解する.融点101 ℃.密度3.20 g cm-3(-40 ℃).77 ℃ で分解してIClと Cl2 になる.有機合成において,塩素化剤,酸化剤に用いられる.[CAS 865-44-1]
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報