改訂新版 世界大百科事典 「毒ガエル」の意味・わかりやすい解説
毒ガエル(蛙) (どくがえる)
poisonous frog
皮膚から強い毒液を分泌するカエル類で,主としてヤドクガエル科に含まれるほか,系統の異なる科にも見られる。ヤドクガエル科Dendrobatidaeの仲間は,インディオが皮膚から分泌される毒液を集めて毒矢に用いることから,ヤドクガエルarrow-poison frogと呼ばれ,159種が中央アメリカから南アメリカの熱帯地方に分布している。体長2.5~4cmの小型で,すべてが美しい色彩,斑紋の持主。ヤドクガエル類のよく目だつ体色は,有毒種であることを天敵に認識させる標識色の一種(警告色)といえる。おもに熱帯降雨林の林床に生息し,ジャンプ力はあまりなく,指先は特殊な吸盤状。マダラヤドクガエルDendrobates auratusなどは日本でも飼育されておりよく見られる。またヤドクガエル属やユビナガヤドクガエル属Phyllobatesには,雄が幼生を背にくっつけ,発育が進むまで保護する種が知られている。バトラコトキシンと呼ばれるヤドクガエルの毒はフグ毒の10倍も強く,インディオは1匹分の毒から50本の毒矢をつくるといわれる。しかし科の中には無毒のヤドクガエルモドキ属Colostethusも含まれている。
ヒキガエル科ではあるがヤドクガエル属と形態の類似したアテロプス属Atelopusも有毒で,49種が熱帯アメリカに分布する。アマガエル科にも熱帯アメリカに分布するドクアマガエル属Phrynohyasなどの有毒種が含まれるが,かつてヤドクガエル科に含められていた体長約1cmの世界最小種のキューバチビガエルSminthillus limbatusは,果たして有毒か否か疑問視されている。またヒメジムグリガエル科(=ナゾガエル科)のアフリカドクガエル(ナゾガエル)属Phrynomerus6種も有毒種である。
執筆者:松井 孝爾
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報