改訂新版 世界大百科事典 「比推定」の意味・わかりやすい解説
比推定 (ひすいてい)
ratio estimate
数理統計学で用いられる推定法の一つ。N個の壺があり,それぞれの壺の中に量,濃度の異なる食塩水が入っているとしよう。壺に番号をつけk番目の壺に入っている食塩水の量をxk,その食塩水が含む食塩の量をykとする。このとき2種類の計量,
x1,x2,……,xn
y1,y2,……,yn
が存在することになる。Nは非常に大きな数であるとし,最初のn個(n<N)の壺の食塩水について検査できるとする。すなわち,x1,x2,……,xn;y1,y2,……,ynは知ることができる。問題は,全体のN個の壺の食塩水を一つの大きな容器に入れたとき,その食塩水の濃度はどうなるかということである。このとき,量,
を求める食塩水の濃度の推定量とする。このとき,注意すべきは,量を推定量として用いてはならないことである。この量は,最初のn個の壺の食塩水を一つの容器に入れたときの食塩水の濃度に等しくないことは明らかである。
次に,全体の食塩水の量(x1+x2+……+xn)がわかっている場合を考えよう。このときは,全体の食塩の量(y1+y2+……+yn)を,量,
で推定できる。
これまで,食塩水とその濃度を用いて比推定を説明したが,一般に次の状況を考えよう。母集団のN個の抽出単位について2種類の計量,
x1,x2,……,xn
y1,y2,……,yn
があるとする。このとき,比を推定するには,推定量(1)を用いればよい。また,(x1+x2+……+xn)が既知であり,(y1+y2+……+yn)を知りたければ推定量(2)を用いればよい。
執筆者:清水 昭信
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報