改訂新版 世界大百科事典 「氏家氏」の意味・わかりやすい解説
氏家氏 (うじいえうじ)
栃木県さくら市の旧氏家町の勝山城を本拠とした中世豪族。その祖は宇都宮朝綱の三男公頼といわれるが,彼は塩谷町佐貫観音の銅版曼陀羅銘に〈右兵衛尉橘公頼……建保五年〉とあって橘姓であり,宇都宮氏の藤原道兼流とは出自を異にする。公頼は氏家24ヵ郷を領して氏家氏を名のり,朝綱の父宗綱の女を妻とするなど,宇都宮氏と早くから姻戚・被官関係を結ぶ。《吾妻鏡》には公頼のほか公信・経朝の3代の名がみえ,しばしば将軍の供奉人を務め,流鏑馬(やぶさめ)・笠懸は〈抜群の射芸〉といわれた。正安年中(1299-1302)越中国に移住した重定の子氏家中務丞重国は,1338年(延元3・暦応1)越前藤島で新田義貞の首を取り,その功により足利尊氏から美濃国石津郡高須・沢田・一ノ瀬等の地頭職に補任された。また51年(正平6・観応2)駿州薩埵(さつた)山の合戦で,貞朝・忠朝,周綱・綱元父子の活躍が《太平記》にみえ,南北朝期がその全盛時代。戦国期美濃三人衆の一人氏家卜全(ぼくぜん)は重国の後裔。
執筆者:新川 武紀
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報