騎射の中で一番古くからあり、犬追物や流鏑馬(やぶさめ)ほど儀式に厳しくなく、設備も簡単で場所も狭くてすむので、平安・鎌倉時代は盛んに行なわれ、日記類にもしばしば記されている。室町時代になると、騎射の三つ物の一つとして武人の間で盛んに行なわれた。江戸時代には、徳川吉宗が犬追物・流鏑馬などと共に復興した。
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武芸鍛練のために行われた射芸の一つで,馬上より遠距離の的を射る競技。その由来は笠を懸けて的としたことによる。的は檜を裏板に用い,表に牛革を張り,革と板の間に綿を入れ,中央に墨で適宜の大きさの丸を描いた連銭のそれが使用された。的間(まとあい)は10丈(約30m)。矢は鏃(やじり)を除いて鏑(かぶら)を大きく笠懸用に作った蟇目(ひきめ)が用いられた。的の遠近により遠笠懸,小笠懸の別があった。ほかに神社の祭祀に供される神事笠懸,鬮(くじ)によって敵手を定め勝負を決する鬮笠懸,また百番笠懸,七夕笠懸などの種類があった。笠懸はすでに平安時代から行われていたらしく,藤原明衡の《新猿楽記》などの往来物や《中右記》など日記類にも散見する。その後,鎌倉時代になると,犬追物(いぬおうもの),流鏑馬(やぶさめ)とともに武芸習練の騎射三物(きしやみつもの)の一つとして盛行し,室町期には作法も整い多くの故事書が編纂された。
執筆者:関 幸彦
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群馬県南東部、新田郡(にったぐん)にあった旧町名(笠懸町(まち))。現在はみどり市の南部を占める地域。1990年(平成2)町制施行。2006年(平成18)勢多(せた)郡東村(あずまむら)、山田(やまだ)郡大間々町(おおまままち)と合併して市制施行、みどり市となった。JR両毛線、東武鉄道桐生線、国道50号が通じる。大間々(おおまま)扇状地の扇頂部に近く、江戸初期に岡登(おかのぼり)用水ができてから発生した集落が多い。野菜、果樹などの畑作中心の農村で、トマトやナス栽培が盛んであるが、近年では南東部を中心に宅地が増加している。東部の阿左見(あざみ)沼は人造湖で、養魚、競艇場で知られる。岩宿遺跡(いわじゅくいせき)は、1946年(昭和21)相沢忠洋(あいざわただひろ)が発見した旧石器時代遺跡で国指定史跡。
[村木定雄]
固定した的を、疾走する馬上から蟇目(ひきめ)(笠懸蟇目)の矢で射る武技。古くは綾藺笠(あやいがさ)を的にしたことからその名がおこったという。すでに11世紀には京洛(けいらく)や各地で行われており、ことに鎌倉時代になって盛行、「関東武士の士風」とさえいわれたが、室町時代末期以降は衰退した。馬が走る「さぐり」(長さ約107メートル)と的との距離によって、遠笠懸と小笠懸に大別され、単に笠懸という場合は遠笠懸をさすのが普通である。遠笠懸の的までは約18メートルである。的は檜(ひのき)板に綿を重ねて革で包み、中央に黒の円を描いた径約54.5センチメートルの円形の的を用いる。これに対して小笠懸は、足許の伏鳥を射るさまを式法化したと伝えるように、方約12センチメートルの角板の的を地上約36センチメートルの高さに立て、さぐり際(ぎわ)約24センチメートルの至近距離から射る。このほかに目的や競技の方法によって、神事笠懸、くじ笠懸、七夕(たなばた)笠懸、百番笠懸などの種類がある。
[宮崎隆旨]
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馬上の射技の一つ。本来射手(いて)の笠を懸けて的としたための呼称で,馬上から遠距離の対象を射る訓練を目的とした。流鏑馬(やぶさめ)よりも略式で行われ,装束も烏帽子(えぼし)・直垂(ひたたれ)に行騰(むかばき)だけで,矢も雁股(かりまた)の鏃(やじり)を抜いた鏑矢(かぶらや)を用いた。正式の馬場は直線1町(弓杖51杖)。走路を疏(さぐり)とよび,馬場本から弓杖33杖,疏から8杖の距離に的を立てた。疏を逆行して馬手(めて)側の小的を射ることを小笠懸,通常の笠懸を遠笠懸とよぶ。
出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報
出典 旺文社日本史事典 三訂版旺文社日本史事典 三訂版について 情報
…草鹿は,草に鹿の伏した形をヒノキの板を心として白革で作り,栗色塗として斑文の星を白く出して矢あてとし,裏に乳を4ヵ所つけて鳥居形にかけた(図)。騎射の的は流鏑馬(やぶさめ)に笠懸(かさがけ)と挟物(はさみもの)がある。流鏑馬の的は径1尺8寸の方形のヒノキの板的で竹串にはさんで立て,笠懸は射手の綾藺笠(あやいがさ)をかけて的としたのを形式化し,1尺8寸円の革的を鳥居形にかけるのを例とした。…
※「笠懸」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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