氷上郡(読み)ひかみぐん

日本歴史地名大系 「氷上郡」の解説

氷上郡
ひかみぐん

面積:四九三・二八平方キロ
柏原かいばら町・氷上ひかみ町・青垣あおがき町・春日かすが町・市島いちじま町・山南さんなん

県の中央部東端に位置し、南は篠山市と西脇市、多可たか黒田庄くろだしよう町・なか町・加美かみ町、西は朝来あさご生野いくの町・山東さんとう町、北は京都府天田あまた夜久野やくの町、同府福知山市、天田郡三和みわ町に接する。かつては丹波国の西端に位置し、南は同国多紀たき郡、播磨国多可郡、西は但馬国朝来郡、北は丹波国天田郡に接していた。粟鹿あわが(九六二・三メートル)を最高峰として四周を標高三〇〇―八〇〇メートル級の山岳に囲まれ、由良ゆら川上流の竹田たけだ川と黒井くろい川、加古川上流の佐治さじ川・篠山川・牧山まきやま川・柏原川流域に狭小な盆地が形成されている。氷上町石生いそ付近にある両水系の分水界は標高九五メートルで、列島中央部では最も低位にある平地分水嶺として名高い。

〔古代〕

「古事記」孝霊天皇段に加古川を「針間氷河」とし、氷上はその上流の意とする説がある。「日本書紀」天武天皇一三年(六八四)一二月条に「丹波国氷上郡」とあるが、同書崇神天皇六〇年七月条に丹波の氷上の人として氷香戸辺の名がみえ、郡名を負う人物が古くからいたと考えられていたようである。郡の北東部の市島町には白鳳時代のづか廃寺があり、古代豪族の拠点があったとみられる。郡衙の所在地は明らかでないが、郡名の遺称地氷上町氷上に求める説、また奈良・平安期の大型掘立柱建物跡が検出された春日町七日市なぬかいち遺跡とする説もある。「和名抄」高山寺本には栗作くりつくり挙田あぐた石生いそう船城ふなき春部かすかべ美和みわ・竹田・前山さきやま(「以上東県」とあり)、佐治・伊中いなか賀茂かも・氷上・石前いわさき葛野かどの沼貫ぬぬき井原いはら(「以上西県」とあり)の一六郷を記し、東急本・名博本にはさらに余戸あまりべ郷がみえる。養老令の規定によれば大郡となる。また木簡によると奈良時代には「石負里」「忍伎郷朝鹿里」「氷上郷横田里」「井原郷上里」があった。春日町山垣やまがき遺跡からは濠をめぐらした建物跡が発見され、出土した木簡から八世期前半の遺跡とみられ、里長の館跡とする説があるが、近接する七日市遺跡と関連する郡衙関係遺跡とする見方もある。山陰道は多紀たき郡からかねさか峠を越えて郡内に入り、星角ほしずみ・佐治駅を経て遠坂とおざか峠を越えて但馬国へと続く。「延喜式」によれば郡衙に伝馬五匹が置かれ両駅に駅馬八匹が備えられた。星角駅は現在まで遺称地が見当らないが、距離的にみて石生付近が適当として「星」を「石生」の誤写、「角」を衍字とする見方もある(大日本地名辞書)。佐治駅は青垣町佐治を遺称地とする。

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

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