日本大百科全書(ニッポニカ) 「注文(古文書)」の意味・わかりやすい解説
注文(古文書)
ちゅうもん
古文書の一様式。ある事柄を調査し、その要件を明細書きとしたメモ。類似の用語として注進状があるが、注文は「一つ書き」の形式をとることが多い。また独立した文書としての意味合いを有する注進状に対して、注文は副進文書や単なる手控えをいう場合が多い。なお、調査・書き上げの対象は、人名、人数や物品の数量、種類などまったく任意であり、この点で財物のリストとして作成された目録と異なる。注文が文書様式として発展した時代は中世であって、「交名(きょうみょう)注文」(人名リスト)、「合戦手負(かっせんておい)注文」(戦闘負傷リスト)、「支度(したく)注文」(必要物品リスト)などの個別的名称も生まれた。
[保立道久]