海洋の自由(読み)かいようのじゆう

日本大百科全書(ニッポニカ) 「海洋の自由」の意味・わかりやすい解説

海洋の自由
かいようのじゆう

海洋がいずれの国の主権下にも置かれないとする、国際法上の原則。15世紀末の新大陸と東インド航路の発見を契機に、スペインとポルトガル大西洋インド洋および太平洋領有を主張した。これに対してオランダとイギリスは、16世紀後半から実力でこれらの海域に進出するとともに、海洋は自由であると主張した。1609年にオランダの学者グロティウスは『自由海論』Mare Liberumを刊行して、海洋を領有することが許されず、海は自由な使用に開放されていることを学問的に論証した。他方、イギリスは、このころからイギリス周辺海域の領有を主張し、これを正当化したのがセルデンJohn Seldenの『閉鎖海論』Mare Clausum(1635)であった。ここに、海が領有できるか否かをめぐって論争が展開された。しかし、その後の学説の発展は、海洋を公海領海とに分けて論ずるようになり、海洋の自由は公海自由の原則として確立したのである。

[高林秀雄]

『高林秀雄著『領海制度の研究』第2版(1979・有信堂高文社)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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