添・副・擬(読み)そえる

精選版 日本国語大辞典 「添・副・擬」の意味・読み・例文・類語

そ・える そへる【添・副・擬】

[1] 〘自ア下一(ハ下一)〙 そ・ふ 〘自ハ下二〙 前からあるものに、別のものがさらに加わる。増して多くなる。続けてふえる。伴う。
※竹取(9C末‐10C初)「貝をえとらず成にけるよりも、人の聞き笑はんことを日にそへて思ひ給ければ」
源氏(1001‐14頃)帚木「人なみなみにもなり、少しおとなびんにそへても、又、並ぶ人なくあるべきやう」
[2] 〘他ア下一(ハ下一)〙 そ・ふ 〘他ハ下二〙 あるものに対して、新しく別のものをつけ加える。
① つけ加える。つけ足す。補う。
万葉(8C後)二〇・四四六五「はじ弓を 手握り持たし 真鹿児矢を 手挟み蘇倍(ソヘ)て 大久米の ますら猛男を 先に立て」
※俳諧・奥の細道(1693‐94頃)太田神社「木曾義仲願状にそへて此社にこめられ侍よし」
② つき従わせる。付き添わせる。いっしょにやる。伴わせる。
古事記(712)上「後には、其の八はしらの雷神に、千五百の黄泉軍(よもついくさ)を副(そへ)て追はしめき」
※源氏(1001‐14頃)夕顔「女も、いと怪しく、心得ぬ心地のみして、御使に人をそへ、あか月の道をうかがはせ、御ありか見せむと尋ぬれど」
③ 近くに寄せる。身近に寄せる。身につける。
※万葉(8C後)二・二一七「しきたへの 手枕まきて 剣大刀(つるぎたち) 身に副(そへ)寝けむ 若草の その夫(つま)の子は」
④ なぞらえる。よそえる。違っているものを、かりにそれと見立てる。たとえる。擬す。よそう。
※万葉(8C後)八・一六四二「たな霧らひ雪も降らぬか梅の花咲かぬが代(しろ)に曾倍(ソヘ)てだに見む」
有明の別(12C後)一「かたじけなきことにそへては、せきやらずおしあてたるぞ、さるきはに、物のあはれしるかたらひは、げにあはれなりける」
[補注](1)上代特殊仮名遣では「ソ」は甲乙両類があるが、乙類は「擬す、なぞらえる」の意の下二段動詞「そふ」および「よそふ」に見られ、副、添の意は、一部地名に乙類のものも見えるものの甲類が多く見られる。従って、(二)④の擬す、なぞらえるの意の「そふ」は添、副の意の「そふ」とは本来別語であるとも考えられる。
(2)室町時代ごろからヤ行にも活用した。→そゆ(添)

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