夕顔(読み)ゆうがお

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

夕顔
ゆうがお

源氏物語』に登場する女性。頭 (とう) の中将愛人 (常夏の女) で玉鬘を産み,のち夕顔の花く粗末な家に住んで光源氏の目にとまり愛されるが,源氏とともに夜を過すうち,もののけにとりつかれて死ぬ。謡曲の『夕顔』『半蔀 (はしとみ) 』などにも登場する。

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デジタル大辞泉の解説

ゆう‐がお〔ゆふがほ〕【夕顔】

ウリ科の蔓性(つるせい)の一年草。茎が長く伸び、巻きひげで他に絡みつく。葉は浅く裂けた心臓形で互生する。夏の夕方、花びらが深く五つに裂けた白色の雄花と雌花とを開き、翌朝にはしぼむ。実が球状のマルユウガオと円筒状のナガユウガオとがある。主にマルユウガオから干瓢(かんぴょう)をつくる。アフリカ・熱帯アジアの原産で、日本では古くから栽培。 花=夏 実=秋》「―のひらきかかりて襞(ひだ)ふかく/久女
ヨルガオの俗称。

ゆうがお【夕顔】[書名・謡曲]

源氏物語第4巻の巻名。また、その女主人公の名。初め頭中将(とうのちゅうじょう)に愛されて玉鬘(たまかずら)をもうけるが、のち光源氏の寵を受け、ある夜、物の怪(け)に襲われて急死する。
謡曲。三番目物観世金剛喜多流世阿弥作か。源氏物語に取材。夕顔の霊が現れ、光源氏に愛されながら死んだ話を語り、昔をしのんで舞をまう。

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百科事典マイペディアの解説

夕顔【ゆうがお】

源氏物語》の〈夕顔〉の巻の女主人公。これを扱った能に《夕顔》と《半蔀(はしとみ)》がある。地歌《夕顔》は菊岡検校作曲。八重崎検校箏曲に編曲。文政,天保期ころの作。京物に属する。光源氏と夕顔との恋物語で,地歌には珍しい歌詞の曲。

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世界大百科事典 第2版の解説

ゆうがお【夕顔】

(1)能の曲名。三番目物。鬘物かつらもの)。作者不明。シテは夕顔上(ゆうがおのうえ)の霊。旅の(ワキ)が京都の五条あたりを通ると,ある家から和歌を吟ずる声がする。僧が言葉をかけると,それは若い女性(前ジテ)で,ここは《源氏物語》に書かれた某(なにがし)の院の旧跡であると教える。女はさらに,夕顔上と光源氏が結ばれたときのことから,某の院に泊まった夜に,怨霊たたりで夕顔上が突然死去したことを物語り,姿を消す(〈クセ〉)。

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大辞林 第三版の解説

ゆうがお【夕顔】

ウリ科のつる性一年草。アフリカ・アジアの熱帯地方原産。茎は長く伸び、葉は円心形。雌雄同株。夏の夕方、先が五裂した白色の花を開く。果実は大形の円柱形あるいは扁球形で、若いものは干瓢かんぴようの原料とし、また食用。熟果は器や置物に加工する。黄昏草たそがれぐさ[季] 夏。 《 風呂沸いて-の闇さだまりぬ /中村汀女 》
ヨルガオの別名。

ゆうがお【夕顔】

源氏物語の巻名。第四帖。
○ 源氏物語の作中人物。三位の中将の女むすめ。玉鬘たまかずらの母。帚木ははきぎの巻で頭の中将の恋人常夏とこなつの女として登場。のち光源氏と知り合い、六条辺りの院に伴われた夜、物の怪に襲われて急死。年一九歳。
能の一。世阿弥作か。三番目物。源氏物語に基づく。都へ上った豊後ぶんご国の僧が、五条辺りで夕顔の上の跡を弔っていると、その霊が現れ、光源氏と契りを結んだ昔をしのんで舞い、僧の回向えこうを喜んで消える。

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動植物名よみかた辞典 普及版の解説

夕顔 (ユウガオ・ユウゴウ)

学名:Lagenaria siceraria var.clavata
植物。ウリ科の一年生つる植物,園芸植物,薬用植物

夕顔 (ユウガオ)

植物。夜顔の別称

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精選版 日本国語大辞典の解説

ゆう‐がお ゆふがほ【夕顔】

[1] 〘名〙
① ウリ科のつる性一年草。アフリカ、アジアの熱帯地方の原産で、日本では古くから栽培されている。先の二分した巻ひげで他物にからむ。全体に粗毛を散布する。葉は長柄をもち腎臓形で掌状に浅く裂け縁は歯牙状。雌雄同株。夏、先の五裂した径五~一〇センチメートルの白い合弁花を開く。花は夕方開き、翌朝しぼむのでアサガオやヒルガオに対してこの名がある。果実はほぼ球形(フクベ)のものから長円形(ナガユウガオ)のものまであり多形。若い果実は食べられ、また干瓢(かんぴょう)をつくったり、陰干にして、炭取り・花器・置物などにしたりする。漢名壺盧。たそがれぐさ。ながふくべ。《季・夏》
▼ゆうがおの実《季・秋》
※枕(10C終)六七「夕がほは、花のかたちも朝顔に似て」
② 江戸時代、江戸吉原の松葉屋で、同一の遊女のもとへ二回目に通ってくる遊客をいう。松葉屋抱えの太夫、瀬川が、「ほのぼの見ゆる花の夕顔」という意で、「源氏物語」の夕顔の巻から引用して名づけたといわれる。〔随筆・当世武野俗談(1757)〕
③ 夜の商売などに出るために、夕方、化粧をした顔。
※浮世草子・好色一代男(1682)三「夕㒵(ユフガホ)を作りて、ひらしゃら靡(なび)くといふ事ぞかし」
④ 遊女の異称。
※雑俳・寄太鼓(1701)「夕顔の鳥羽海道へ這ふて出る」
[2]
[一] 「源氏物語」第四帖の巻名。光源氏一七歳の夏、五条の宿りに夕顔を見いだし、八月、夕顔を伴って宿った六条のなにがしの院で、物の怪(け)のため、夕顔を急死させてしまうことを中心に、空蝉(うつせみ)の伊予下向や六条御息所との交渉にも触れる。
[二] 「源氏物語」に登場する女性。初め頭中将に愛され玉鬘をもうけたが、本妻側のおどしによって行方を隠し、源氏に見いだされ、共に宿ったなにがしの院で物の怪に襲われて死ぬ。
[三] 謡曲。三番目物。観世・金剛・喜多流。作者未詳。「源氏物語」による。旅僧が都の五条あたりに来ると、ある家から和歌を吟詠する声が聞こえてき、やがて女が現われて、ここが夕顔が物の怪に襲われて死んだ所だと教え、夕顔が源氏と契りを結んだ有様を語って姿を消す。その夜、僧の夢の中に夕顔の霊が現われて舞を舞い、僧の回向によって迷いが晴れたことを喜ぶ。
[四] 地歌・箏曲の一つ。菊岡検校が文政(一八一八‐三〇)の頃、三味線の手事物として作曲。のち、八重崎検校が箏の手を作曲。
[語誌](1)「枕‐六七」でその花の姿と名が賞されてはいるが、和歌では「人麿集」「江帥集」「散木奇歌集」などに散見するのみであった。平安時代後期に和歌に多く詠まれるようになったのは「源氏‐夕顔」の影響が大きい。そこで詠まれている「心あてにそれかとぞ見る白露の光そへたるゆうかほの花」「寄りてこそそれかとも見めたそかれにほのぼの見つる花のゆふかほ」の歌や、源氏が花の名を問うにあたって引用した「古今‐雑体」の「打渡す遠方人(をちかたひと)に物申す我 そのそこに白く咲けるは何の花ぞも〈よみ人しらず〉」に依拠した歌も多く詠まれた。「白露のなさけおきける言の葉やほのぼの見えし夕顔の花〈藤原頼実〉」〔新古今‐夏〕など。
(2)「山賤(やまがつ)」「賤(しず)」などの語とともに詠まれることも多く、「徒然草‐一九」にも「六月の比、あやしき家にゆふがほの白く見えて」とある。

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