デジタル大辞泉 「夕顔」の意味・読み・例文・類語
ゆう‐がお〔ゆふがほ〕【夕顔】
2 ヨルガオの俗称。
[類語]瓜・真桑瓜・メロン・西瓜・烏瓜・瓢箪・
( 1 )「枕‐六七」でその花の姿と名が賞されてはいるが、和歌では「人麿集」「江帥集」「散木奇歌集」などに散見するのみであった。平安時代後期に和歌に多く詠まれるようになったのは「源氏‐夕顔」の影響が大きい。そこで詠まれている「心あてにそれかとぞ見る白露の光そへたるゆうかほの花」「寄りてこそそれかとも見めたそかれにほのぼの見つる花のゆふかほ」の歌や、源氏が花の名を問うにあたって引用した「古今‐雑体」の「打渡す遠方人(をちかたひと)に物申す我 そのそこに白く咲けるは何の花ぞも〈よみ人しらず〉」に依拠した歌も多く詠まれた。「白露のなさけおきける言の葉やほのぼの見えし夕顔の花〈藤原頼実〉」〔新古今‐夏〕など。
( 2 )「山賤(やまがつ)」「賤(しず)」などの語とともに詠まれることも多く、「徒然草‐一九」にも「六月の比、あやしき家にゆふがほの白く見えて」とある。
(1)能の曲名。三番目物。鬘物(かつらもの)。作者不明。シテは夕顔上(ゆうがおのうえ)の霊。旅の僧(ワキ)が京都の五条あたりを通ると,ある家から和歌を吟ずる声がする。僧が言葉をかけると,それは若い女性(前ジテ)で,ここは《源氏物語》に書かれた某(なにがし)の院の旧跡であると教える。女はさらに,夕顔上と光源氏が結ばれたときのことから,某の院に泊まった夜に,怨霊のたたりで夕顔上が突然死去したことを物語り,姿を消す(〈クセ〉)。その夜僧が読経をして弔うと,夕顔上の霊(後ジテ)が生前の姿で現れ,昔を追懐して舞を舞う(〈序ノ舞〉)。クセと序ノ舞が中心の曲で,はかない運命の主人公にふさわしく,清楚に作られている。
執筆者:横道 万里雄(2)地歌・箏曲の曲名。三弦は菊岡検校(1792-1847),箏は八重崎検校(1776?-1848)作曲の京風手事物。1814年(文化11)版《新大成糸の節》に初出。歌詞は《源氏物語》の〈夕顔〉巻を手短にまとめている。手事では虫の音すだく河原院の情景を描写し,また,後に夕顔が物の怪のためにはかなくなってしまうできごとをも暗示している。大曲ではないが,手事が印象的。
執筆者:久保田 敏子
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