改訂新版 世界大百科事典 「減圧反射」の意味・わかりやすい解説
減圧反射 (げんあつはんしゃ)
depressor reflex
神経あるいは受容器の刺激によって,自動的に心・血管運動中枢を介して身体の広範な血管床,とくに内臓(腎臓,脾臓等)の細動脈が拡張し,動脈血圧が下降する反射現象。この反射は,古く1866年,ツィオンI.F.TsionとルートウィヒC.Ludwigが大動脈神経を刺激したさい心拍数の減少と低血圧が発生したことから知られ,そのため大動脈神経を別名減圧神経ともいう。同様の反射は頸動脈洞神経の電気刺激によっても起こる。減圧反射を起こす最も重要な受容器は,大動脈弓と頸動脈洞の壁に局在する血圧受容器である。これらの領域の動脈圧が上昇すると,受容器からの信号にもとづき,血管運動中枢が脾臓,腎臓,小腸,胃等の血管を支配する収縮性の交感神経の活動を減少させることによって血管を拡張させ,上昇した動脈血圧を減圧し元の値へ回復させる。もし,この反射が働かないと,高血圧を防止し,動脈血圧を正常値へ維持することが困難となる。
→頸動脈洞反射
執筆者:二宮 石雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報