改訂新版 世界大百科事典 「頸動脈洞反射」の意味・わかりやすい解説
頸動脈洞反射 (けいどうみゃくどうはんしゃ)
carotid sinus reflex
頸動脈洞(総頸動脈から内頸動脈が分岐し膨隆した部)への刺激によって,動脈圧が下降する反射現象。頸動脈洞は頭部,とくに脳へ動脈血を供給する入口に当たり,この壁には動脈圧を感受する血圧受容器が局在する。哺乳類の血圧受容器はだいたい60~200mmHgの範囲の血圧変化に応答して,血圧情報を神経インパルス信号に変え,舌咽神経を経由して延髄の心・血管運動中枢へ送っている。中枢は低血圧情報を受けると,反射的に心臓と血管を支配する交感神経の活動の増加と心臓迷走神経活動の抑制を通じて,心臓ポンプ機能の促進および血管(とくに細動脈)の収縮によって低血圧を正常値(約100mmHg)へ回復する。高血圧時には反対の機序が働き正常値へ下げる。このように,この反射は動脈圧がつねに正常値になるように調節しており,とくに人間では横位から直立位へ姿勢を変えたさい頸動脈洞内圧の低下を防止し,頭部の血流を維持する機構としてきわめて重要である。もし,働かないときは起立性低血圧を起こす。
→血管運動中枢
執筆者:二宮 石雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報