日本大百科全書(ニッポニカ) 「溜しょうゆ」の意味・わかりやすい解説
溜しょうゆ
たまりしょうゆ
単に溜(たまり)ともいう。普通のしょうゆより濃厚で、黒っぽい色をしている。味はやや甘ったるく、特有の風味がある。大豆と塩が原料で、濃口(こいくち)しょうゆができる前は溜しょうゆが通常用いられていた。愛知、三重、岐阜の3県でおもにつくられている。作り方は、蒸した大豆を団子にしてみそ玉をつくり麹(こうじ)をつける。これに塩水を混ぜて仕込み、1年間熟成する。溜しょうゆのもろみは堅くて攪拌(かくはん)できない。そのため、もろみの中に細長いざるを入れ、これにたまってくる液汁をくんではもろみの上からかける方法がとられる。熟成したあとは、桶(おけ)の底にある呑口(のみくち)から液を抜いてそのまま製品にする。このようにしてできたものを生引溜(きびきたまり)という。生引溜を抜いた残りにふたたび塩水を混ぜ、10日~1か月置いて底から液汁を抜く。これを素引(すびき)溜という。あるいは、生引溜をとった残りに塩水を混ぜて煮沸し絞ったものをニイラ溜という。溜しょうゆはおもに刺身しょうゆとして用いられる。
[河野友美・山口米子]