翻訳|agitation
流体や粉末ないしは粒状の固体原料をかき混ぜることで,工学的にはかくはん操作またはかくはん混合操作として単位操作の一つに分類されている。狭義には,流体あるいはあまり多量でない粉粒体を含む流体で比較的粘稠でない原料を対象とする場合をかくはん,これに対して濃厚高分子溶液やグリースから粘土等に至るまでの非常に粘稠な原料を扱う場合を捏和(ねつか)または捏和混練,一方,固体の粉粒体原料を主とする場合を固体混合または単に混合と称して区別する。ただし,その区別は慣習的なもので明確なものではない。以下,狭義のかくはんについて述べる。
かくはん装置は,かくはん翼をかくはん槽の中に入れて回転させる方式のものが最も一般的で,家庭用の洗濯機やミキサーにもみられるとおりである(図a)。図b-dに工業用かくはん翼の基本型の例を示す。実用のかくはん翼およびかくはん槽の形,かくはん方式は多種多様で,槽底からガスを吹き込んで液を対流循環させる方式,またポンプで槽内液を出入循環させる方式等も用いられる。
かくはん操作の目的は非常に広範囲にわたるが,大きく次の五つに分けられる。(1)均質化 流体内温度や溶解成分濃度を一様に均質化する。(2)分散微細化 溶解しがたい固体粉末や気体,液体成分を微細化して液中に均質に分散させる。たとえば,重油中への石炭粉末の混合,マヨネーズやドレッシングの調製など。(3)凝集粗大化 (2)と逆に液中の懸濁浮遊物を分離する目的で凝集剤を添加混合して凝集させる。(4)物質移動 特定物質成分の溶解,抽出,吸収等物質の移動を促進する。たとえば,固体粒子や粉末あるいはその中に含まれる有用成分等の溶解,廃油の酸および水洗い,発酵槽中の培養液への気泡の吹込み分散による微生物への酸素供給等にみられる。(5)熱移動 槽内液を外部から加熱あるいは冷却する場合に熱移動を促進する。(1)(4)(5)は反応の促進あるいは制御を目的として行われることも多い。
かくはん作用としては,槽内の液に大きな流動速度あるいは相対変位を生じさせること,液内部に強い剪断力,圧力変動等による圧壊作用,あるいは局所的な相対速度を生じさせること等が考えられる。前者は槽内全体の混合,伝熱の促進,固体粒子等の流動浮遊化,すなわち目的(1)(5)および(2)(4)の一部に強く寄与する。後者は液滴気泡の微細化,局所的な混合の促進を通じて,目的(2)(4)に有効に寄与する。(3)の目的に対しては,凝集粗大化した粒子を破壊しないように,後者の作用の弱い状態でのかくはんが望ましい。
かくはん作用の強さの目安としては,前者に対してはかくはん翼先端速度あるいは回転速度(毎秒回転数)が,後者に対してはかくはん液単位容積当りのかくはん所要動力の大きさがよく用いられ,実験室規模の小型装置で得られた試験結果から大型の装置の性能を予測する場合(スケールアップの問題)にも有用な基準とされる。
執筆者:山本 一夫
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