溶媒和電子(読み)ヨウバイワデンシ

化学辞典 第2版 「溶媒和電子」の解説

溶媒和電子
ヨウバイワデンシ
solvated electron

溶媒和した電子をいう.水やアルコールのような極性の大きな化合物や,そのほか液体アンモニア,アミン類,エーテル類について,存在が確かめられている.室温においてこれらの溶媒中で溶媒和電子の半減期は 10-6 s 以上あり,パルス放射線分解によってその吸収スペクトルが観測されている.溶媒によって吸収スペクトルの極大の位置は異なるが,全体の形は互いに類似している.アルコール類の場合,そのG値は1程度である.室温においてのみでなく,温度および圧力の影響も調べられており,液体窒素温度における剛性溶媒中でも光吸収スペクトル,電子スピン共鳴吸収スペクトルなどが観測されている.放射線照射のみでなく,光化学的方法および電気化学的方法によって生成されたものについても調べられている.その微視的な構造および消滅過程などについてはまだ不明の点が多い.水の場合はとくに水和電子とよばれている.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

世界大百科事典(旧版)内の溶媒和電子の言及

【放射線化学反応】より

…水分子への照射によってこのような状態が形成される可能性についてはすでに1950年ころから指摘されていたが,その存在が確証されたのは1962年,ハートE.J.HartとボーグJ.W.Boagがパルスラジオリシスによって水和電子の吸収スペクトルの測定に成功してからである。その後,アルコールなど極性の強い溶媒中でも同様の活性種の存在が確認され,これは溶媒和電子と呼ばれる。水和電子は720μmをピークとし,可視から赤外にかけて広い波長の光を吸収し,きわめて反応性に富み,強い還元剤として働く。…

※「溶媒和電子」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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