化学辞典 第2版 「溶媒和電子」の解説
溶媒和電子
ヨウバイワデンシ
solvated electron
溶媒和した電子をいう.水やアルコールのような極性の大きな化合物や,そのほか液体アンモニア,アミン類,エーテル類について,存在が確かめられている.室温においてこれらの溶媒中で溶媒和電子の半減期は 10-6 s 以上あり,パルス放射線分解によってその吸収スペクトルが観測されている.溶媒によって吸収スペクトルの極大の位置は異なるが,全体の形は互いに類似している.アルコール類の場合,そのG値は1程度である.室温においてのみでなく,温度および圧力の影響も調べられており,液体窒素温度における剛性溶媒中でも光吸収スペクトル,電子スピン共鳴吸収スペクトルなどが観測されている.放射線照射のみでなく,光化学的方法および電気化学的方法によって生成されたものについても調べられている.その微視的な構造および消滅の過程などについてはまだ不明の点が多い.水の場合はとくに水和電子とよばれている.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報