濡衣(読み)ぬれぎぬ

精選版 日本国語大辞典 「濡衣」の意味・読み・例文・類語

ぬれ‐ぎぬ【濡衣】

[1] 〘名〙
① 濡れた衣服。ぬれごろも。
万葉(8C後)九・一六八八「あぶりほす人もあれやも沾衣(ぬれぎぬ)を家にはやらな旅のしるしに」
無実の浮き名。根も葉もないうわさ。ぬれごろも。
和泉式部集(11C中)下「ぬれきぬをのみ著ること、今ははらへ捨ててむと人にいひてのち〈略〉重ねつつ人のきすればぬれきぬをいとほしとだに思ひおこせよ」
③ 無実の罪。ぬれごろも。
※大鏡(12C前)二「あめの下かはけるほどのなければやきてしぬれぎぬひる由もなき」
[2] 謡曲。廃曲。諸国一見旅僧が筑前国筑紫郡の染川のほとりで里の女に出会う。女は在原業平と在所の地頭平の定文(さだぶん)の娘との歌物語を語り、娘がぬれぎぬをかけられて死んだいわれをつげる。

ぬれ‐ごろも【濡衣】

〘名〙
① 濡れた衣服。ぬれぎぬ。
※桂宮丙本忠岑集(10C前)「あふことなみに ぬれころも ほさでやただに やみぬべき おもひのほかに うつりはてなん」
② 無実の罪。無実の浮き名。冤(えん)。ぬれぎぬ。
大和(947‐957頃)四四「のがるとも誰かきざらむぬれごろもあめのしたにし住まんかぎりは」
男女情交。こいごろも。
浮世草子世間妾形気(1767)一「一夜までのなさけをとおしつけわざのぬれ衣(コロモ)

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