改訂新版 世界大百科事典 「火鉢造」の意味・わかりやすい解説
火鉢造 (ひばちつくり)
火鉢や風炉を造る工人としては,奈良の西京火鉢造座が著名である。史料上では1333年(元弘3)の《内蔵寮領等目録》に〈大和国内侍原内小南供御人〉が火鉢土器を作料田の年貢として進上しているのと,京都商人役として,奈良火鉢10個を進上しているのをみる。生産者による田地年貢の代りの製品納入と,京都営業の税としての商人による納入とがあったわけである。製品としての火鉢は鎌倉末期の《絵師草紙》にみられ,室町期の草戸千軒遺跡からも出土している(もちろん,これが奈良火鉢であるとは断定できない)。奈良の火鉢造座は大乗院門跡に所属し,1475年(文明7)30人の座人,上首(おとな)7人によって構成され,上首のうち2人は各2反ずつの給田を領主よりもらっていた。その火鉢を京都に売る京座は,《大乗院寺社雑事記》によれば木津の住民で,《山科家礼記》では内蔵寮の火鉢供御人(くごにん)となり,また殿下渡領として近衛家以下に火鉢を納めて,京都に営業独占権を行使し,《三十二番職人歌合》にも詠まれている。西京火鉢造座の風炉火鉢は京都の陶家永楽家の土風炉に継承された。
執筆者:脇田 晴子
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報