日本大百科全書(ニッポニカ) 「炭素被膜抵抗器」の意味・わかりやすい解説
炭素被膜抵抗器
たんそひまくていこうき
電気(子)回路に使用する抵抗器の一種。構造は、ベンゼンなどの炭化水素を1000℃程度の高温で加熱し、セラミックスの支持体上に炭素被膜を析出させ、これに溝切りを行って所定の抵抗値に調整し、端子をつけ表面に保護膜を塗ってある。抵抗値は通常、数オーム~数メガオームである。抵抗値は炭素被膜の厚さによっても変わるが、おもに溝切りにより調節を行う。セラミックスの管の外径が同じ場合、溝の幅を一定とし、炭素膜の幅を大きくすれば抵抗値は低く、幅を小さくすれば高くなる。
一般に抵抗器は、かならずしもオームの法則に従わず、電圧を加えた瞬間に抵抗値の変化が生ずる。一般に電圧の増加によって抵抗値は減少するが、炭素被膜抵抗器では0.02%以内と小さい。また、抵抗値は温度によっても変化し、炭素系の場合は温度係数が負であるため、定格電力より超過した電流を流したり、高温の場所で使用すると若干低くなる。
なお、抵抗素子に電流を流すとき、熱雑音のほかに電流による雑音の増加がある。通常、単位電圧当り、2分の1ワット型で10キロオームで0.1マイクロボルト程度、1メガオームで0.4マイクロボルト程度である。以上のほか、炭素粉末をセラミックスの上に塗布したものや、加圧成形したソリッド型の抵抗器も使われている。
[吹野 正]