改訂新版 世界大百科事典 「煙灰」の意味・わかりやすい解説
煙灰 (えんばい)
flue cinder
鉱石を製錬する工程で発生するガスや石炭,重油を燃焼する際の廃煙および都市ごみを燃焼する際に生成する煙には,煤塵(ばいじん)が含まれ,その含有量および煤塵中の有害物質の排出基準は大気汚染防止法で規制されている。したがって,大気中に生成ガスを放散する前には,この規制値以下にするために煤塵除去の工程を必要とする。この工程で得られた煤塵を一般に煙灰とよぶ。この煙灰中には,有害物質のみならず,廃ガスの発生する工場の種類により,有価な微量の不純物を含むことが多い。原料の粉末がそのまま飛散回収されたものと,原料中の揮発性成分が揮発され再凝縮されたものの2種類のものが煙灰中には混在するが,後者は貴重な製錬原料となる。たとえば,重油燃焼煙灰からのバナジウム,石炭乾留の際のゲルマニウム,銅製錬からの鉛,セレン,テルル,鉛製錬からのインジウム等は煙灰から回収されている。
執筆者:後藤 佐吉
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報