インジウム

デジタル大辞泉 「インジウム」の意味・読み・例文・類語

インジウム(indium)

硼素元素の一。単体は銀白色のやわらかい金属で、酸に溶けるがアルカリには溶けない。半導体材料・合金めっきなどに使用元素記号In 原子番号49。原子量114.8。

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精選版 日本国語大辞典 「インジウム」の意味・読み・例文・類語

インジウム

  1. 〘 名詞 〙 ( [英語] indium ) 金属元素の一つ。記号 In 原子番号四九。原子量一一四・八二。閃亜鉛鉱などの硫化鉱物中に含まれる。白色光沢をもつ柔らかい金属で加工性にすぐれ、メッキ、合金などに用いられる。〔稿本化学語彙(1900)〕

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化学辞典 第2版 「インジウム」の解説

インジウム
インジウム
indium

In.原子番号49の元素.電子配置[Kr]4d105s25p1周期表13族金属元素.元素名は原子輝線スペクトルのインジゴ色から命名された.1863年,ドイツのF. ReichとH.T. Richterがせん亜鉛鉱中に発見した.原子量114.818(3).天然には,質量数113(4.29(5)%)と115(95.71(5)%)の2種の同位体が存在し,後者は,4.41×1014 y という永い半減期をもつ,0.496 MeV のβ線を放出する放射性同位体である.質量数98~134の放射性核種が知られる.
地殻中の存在度0.1 ppm.鉛や亜鉛鉱の精錬の際に得られる.金属はシアン化物などの水溶液から電解還元してつくられる.資源的にレアメタルの一つで枯渇が心配されている.主要産出国はカナダ,中国であるが,輸入先は中国,韓国,カナダ,アメリカの順である.わが国では,定山渓近くの豊羽鉱山は最高品位の粗鉱を産出していたが,鉱量枯渇で2006年3月閉山.輸入亜鉛精鉱の副産物と家電製品リサイクルからの回収で世界最大の需要(888 t,2006年)をまかなっている.軟らかい銀白色の金属.融点156.61 ℃,沸点2080 ℃.密度7.31 g cm-3(20 ℃).標準電極電位 In3+/In-0.3382 V.第一イオン化エネルギー5.786 eV.化学的にはアルカリ溶液に対しては抵抗を示すが,酸には容易に侵される.化合物は Inと In化合物があるが,In化合物は強い還元作用をもつ.インジウムはあざやかな藍色(インジゴ)の炎色反応を示し,分析には波長451.155,410.195 nm のスペクトル輝線が用いられる.歴史的には,低融点,可塑性を利用して軸受け・ベアリング用合金の材料としての用途が大きかったが,現在の最大の用途は液晶ディスプレイ用のITO透明電極でわが国では95% 以上(2006年),そのほか,発光ダイオードなど,化合物半導体の材料,低融点合金ガラス封着用合金の材料などに用いられる.毒性はとくに高くはないが,PRTR法・第二種化学物質として,作業環境クラス2(1 mg m-3 以下(気体),0.1 mg m-3 以下(粒子状物質))の指定を受けている.[CAS 7440-74-6]

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改訂新版 世界大百科事典 「インジウム」の意味・わかりやすい解説

インジウム
indium

1863年,ドイツのライヒFerdinand Reich(1799-1882)とリヒターHieronymus Theodor Richter(1824-98)によってセン亜鉛鉱中に発見された。これは1860年に開発された分光分析法の適用によるものであり,その固有の鮮やかなインジゴブルースペクトル線によって発見され,元素名もこれにちなんで命名された。天然に単体またはインジウム鉱物としては産出しない。亜鉛,鉛の鉱石にガリウムとともに少量含有され,したがって,亜鉛,鉛の製錬の際に副産物として回収される貴重な元素である。亜鉛,鉛製錬の煙灰や,浸出残渣処理工程から,有機溶媒抽出等の方法により濃縮回収される。

 単体はやや青みを帯びた銀白色の金属で,鮮やかな金属光沢をもつ。鉛より軟らかくつめでかき傷をつけることができる。展性,加工性に富み,圧力を加えるとほとんど無限に変形でき,曲げるとスズの場合と同じように音がする。常温においては一般に反応性に乏しく,空気中で安定だが,強熱すると酸化物となる。空気中で薄い酸化物の被膜を生ずるが,これはアルミニウムの場合より侵されやすい。二酸化炭素を含む湿った空気中で,とくに不純物として鉄が存在すると酸化されやすい。粉末状にすると沸騰水と反応して水酸化物となる。鉱酸と加熱すると反応して水素を発生,熱硝酸とは窒素酸化物を発生する。また酢酸,シュウ酸にも可溶である。アルカリには侵されない。加熱時,ハロゲン,硫黄,リン,窒素と反応する。3価の化合物が安定で最も普通であるが,1価のハロゲン化物,酸化物も知られている。

 インジウムはInP,InAs,InGaAs等の金属間化合物半導体として,オプトエレクトロニクス関係には不可欠の材料となっている。また,めっき,低融点合金としても用いられる。インジウム化合物の人体への影響としては,歯の劣化,骨,関節の痛み,神経,胃腸障害などが知られている。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「インジウム」の意味・わかりやすい解説

インジウム
いんじうむ
indium

周期表第13族に属し、ホウ素族元素の一つ。1863年、ドイツのライヒとリヒターによって閃(せん)亜鉛鉱中から発見され、インジゴ青色のスペクトル線を発することからラテン語のindicum(青藍色)にちなんで命名された。天然には主たる鉱物はなく、閃(せん)亜鉛鉱などの硫化鉱物中に微量存在する。質量数113と115の2種類の同位体が知られる。亜鉛あるいは鉛精錬などの残渣(ざんさ)から回収される。粗製品は電解精製などをしてから、さらに帯融解によって純度99.9999%以上のものが得られている。銀白色の非常に軟らかい金属。小刀で切ることができ、ほかの金属にこすりつけるとすぐ付着し、圧力によってすぐ変形する。空気中では比較的安定で光沢を失わないが、水によって錆(さ)びる。酸に溶けて、通常、酸化数Ⅲの化合物をつくるが、酸化数Ⅰの化合物も多くある。見かけが酸化数Ⅱの化合物は酸化数ⅠとⅢが共存する化合物である。インジウム24%とガリウム76%の合金は常温で液体である。ガリウムと同じく半導体材料(ゲルマニウムへの添加、またインジウムの酸化物、硫化物など)として用途が広い。ガリウムと同じく高温計のほか、低融点合金、機械類の軸受や歯車などの表面被膜、ガラスの色付け(黄色)などに用いられる。

[守永健一・中原勝儼]



インジウム(データノート)
いんじうむでーたのーと

インジウム
 元素記号  In
 原子番号  49
 原子量   114.82
 融点    156.61℃
 沸点    2080℃
 比重    7.31(測定温度20℃)
 結晶系   正方
 元素存在度 宇宙(Si106個当りの原子数)
          0.217(第67位)
       地殻 0.1ppm(第65位)
       海水 (/mgL-1)<0.02

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「インジウム」の意味・わかりやすい解説

インジウム
indium

元素記号 In ,原子番号 49,原子量 114.818。天然には同位体インジウム 113 (存在比 4.28%) と 115 (95.72%) が存在する。インジウム 115は天然放射性核種で半減期 6×1014 年,β線を放出する。周期表 13族に属する。単体は銀白色の非常に軟らかい金属で,ナイフで切ることができる。比重 7.282。融点 156.4℃。アルカリ水溶液とは反応しないが,酸と反応して溶ける。3価の陽イオンをつくる。航空機用スリーブベアリング,軸受用インジウムメッキ,易融合金,ガラス封着用合金などに用いられる。また酸化物,硫化物などは半導体であり,電子工業における用途が広い。地殻存在量 0.1ppm,亜鉛精錬の副産物として得られる。

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百科事典マイペディア 「インジウム」の意味・わかりやすい解説

インジウム

元素記号はIn。原子番号49,原子量114.818。融点156.5985℃,沸点2072℃。1863年F.ライヒとH.T.リヒターがセン亜鉛鉱中に発見。単体は銀白色で蝋(ろう)のように柔らかい金属。空気中で安定であるが,水にあうとさびやすい。地殻中微量に存在。軸受,低融点合金などに使用。III‐V族化合物半導体の材料としても使われる。

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