改訂新版 世界大百科事典 「熱希釈法」の意味・わかりやすい解説
熱希釈法 (ねつきしゃくほう)
thermodilution method
循環動態を検査する一方法。冷水を血液に混ぜると急速にかつ均一に熱が奪われる。注入熱量と血液に移行した熱量とが同じであることを利用して,心臓血管内を流れている血液の温度変化を希釈曲線として描き,血流量を測定する方法である。本法には,冷水注入穴と温度変化を測定する半導体サーミスターを同時に取りつけた心臓血管カテーテルを用いる。現在おもに用いられるのは心拍出量測定用のスワンガンツカテーテルと,局所静脈血流量測定用のウェブスターカテーテルである。前者は,注入穴を右心房におき,サーミスターを肺動脈内に位置させるように血流に沿ってカテーテルを操作し,5~10mlの0℃,5%ブドウ糖液を急速に1回注入する。後者は,冠静脈洞,腎静脈などに逆行性に挿入し,先端部の注入穴から室温液を一定温度変化が得られるまで持続的に注入する。本法は心臓カテーテル法を必要とするが,操作が簡単で繰り返し測定できる利点があり,心筋梗塞(こうそく)でICUに運ばれた重症患者監視によく用いられる。
執筆者:柳沼 淑夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報