日本大百科全書(ニッポニカ) 「片足脚絆」の意味・わかりやすい解説
片足脚絆
かたあしきゃはん
昔話。鳥の前世が人間であったことを主題にする鳥の由来譚(たん)の一つ。継母が、父親が留守の間に継子を殺す。父親は、帰ってくると子供がいないので、脚絆を片方つけたまま捜しに出かける。子供は名をカッコウという。父は子供の名をよびながら鳥になる。それでカッコウは、いまでも片足が黒いという。類話はロシア人や北西モンゴルのキルギス人にもある。キルギス人の伝えはやはりカッコウの由来譚である。馬がいなくなる。妻の妹が捜しに行き、そのまま鳥になり、いまも「馬がいない、ククク」と鳴いている。妹は、一方は自分の黒い靴を、他方は姉の夫の靴を履いていたという。これは、馬を逃がした馬飼いが、馬を捜しながら鳥になったという、日本の「馬追鳥」の昔話とも一致する。鳥の前世が牛飼いであったという昔話は、ドイツなどヨーロッパにもある。
[小島瓔]