労働や歩行の際,脛(すね)を保護し,動きやすくするためにつける服装品の一つで,広狭2義ある。古く平安時代には脛につける服装品の総称として〈はばき(脛巾)〉という語が行われていたが,室町時代になると〈きゃはん(脚巾,脚絆,脚半)〉という語があらわれ,江戸時代以降は脚絆が総称として用いられるようになった。脛巾と脚絆の区別は,一般的には,脛巾は稲わら,ガマ,イグサなどでつくられたもの,脚絆は主として布製のものとされるが,現在では地域によっては脛巾と脚絆の両方の語が用いられ,現物も混同しているようである。平型と筒型があり,平型には扇形の布の上下に紐をつけて脛に巻く大津脚絆と,脛の太さに応じた〈まち〉を入れて扇形とし,これを巻いて上から下までこはぜでとめる江戸脚絆とがある。筒型のものは筒脚絆ともいい,脛の太さに合わせて円筒形につくり,上下に紐をつけて結ぶ。材料は大半が紺木綿を用い,裏に同色または浅葱木綿をつけて袷(あわせ)仕立てとする。現代では農林業,土木,建築などの作業に使われる。珍しい脚絆として水田作業用にゴム製の長い円筒形のものがある。これらの脚絆とは別に,明治以降第2次大戦まで軍隊を中心に用いられた巻脚絆(ゲートル)がある。また19世紀から20世紀にかけてヨーロッパで男女間に流行したスパッツspatsは,ゲートルの一種で,ラシャ地などでつくられ,ボタンやバックルで留める。現在も同様のものが毛糸などでつくられ,防寒や保護のために用いられる。
執筆者:日浅 治枝子
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労働、旅、防寒のために脛(けい)部にあてて用いるもの。紺木綿でつくられる。女性が四国巡礼などに出向くおりは、白木綿が用いられる。男性も山岳信仰の場合は清浄を重んじて白である。室町時代の絵巻『慕帰絵詞(ぼきえことば)』のなかで、小者(こもの)が着装している図が古い例であろう。江戸時代には、大津脚絆、江戸脚絆、筒脚絆の3種があった。大津脚絆は脛巾(はばき)のようにつくり、脚絆の上部と下部に絎(く)け紐(ひも)をつけて結ぶ。江戸脚絆は布を脛部に当てて裁断し、留め具は上部を絎け紐、ふくらはぎをこはぜ掛けとしたものである。筒脚絆は、京都のほか修験道(しゅげんどう)、狂言などに用いられ、円筒形に仕立てて、上部、下部を絎け紐としたものである。脚絆は長い旅で、脚が疲れるのを防ぐ意味をもっており、明治以降も旧陸軍では革脚絆がつくられ、学生の間でも通学や修学旅行に用いたところもある。
[遠藤 武]
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…また《延喜式》では蒲脛巾あるいは脚纏,緋脛巾の類が近衛府の武官に用いられていたようである。室町時代から脚絆(きやはん)の語があらわれ,江戸時代に入ると脛巾と脚絆が併用され,あるときは混同されていたようである。江戸時代の《和漢三才図会》や《嬉遊笑覧》には脛巾の確たる説明がなく,脚絆のみ見られる。…
※「脚絆」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
各省の長である大臣,および内閣官房長官,特命大臣を助け,特定の政策や企画に参画し,政務を処理する国家公務員法上の特別職。政務官ともいう。2001年1月の中央省庁再編により政務次官が廃止されたのに伴い,...
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