改訂新版 世界大百科事典 「猿女氏」の意味・わかりやすい解説
猿女氏 (さるめうじ)
鎮魂祭に奉仕する,猿女と呼ばれる女性を貢進した古代氏族。天孫降臨に際し,その先導となった天鈿女命(あめのうずめのみこと)を祖と伝える。〈弘仁私記序〉に,稗田阿礼(ひえだのあれ)を,天鈿女命の後裔と伝えているので,稗田氏と同様,和珥(わに)氏の同族であった可能性がある。それはまた,《類聚三代格》に引く弘仁4年(813)10月28日の太政官符に,猿女が,小野朝臣により縫殿寮に貢進されていた事実からも推測できる(《西宮記》の裏書では,それを猿女公氏からの貢進と表現している)。延喜縫殿寮式や《古語拾遺》によれば,猿女は鎮魂祭に際して神楽を奉仕した。また,《古語拾遺》の記述によれば,猿女氏は,中臣氏や忌部氏とともに古代の宮廷祭祀氏族であったかと考えられる。
執筆者:和田 萃
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報