裏書(読み)ウラガキ

デジタル大辞泉 「裏書」の意味・読み・例文・類語

うら‐がき【裏書(き)】

[名](スル)
文書・書画などの裏面に文字を書くこと。また、書いたもの。
㋐巻物の裏に、注釈・補遺などを書くこと。また、その文字。
㋑書画の軸物の裏に鑑定の結果を書くこと。また、その字句。
㋒江戸時代、訴状の裏面に、命令あるいは出廷期日などを記したもの。
小切手などの支払いを受ける際、その裏に住所・氏名を書き、押印して、領収の証明をすること。
㋔手形・小切手倉庫証券船荷証券などの指図証券を譲渡する際、証券の裏などに裏書人が必要事項を記載して署名すること。通常は譲渡裏書をさすが、広義には質入裏書取立委任裏書を含む。
物事が確実であることを別の面から証明すること。また、その証明。裏づけ。「陳述を裏書きする事実」
[類語]証明立証実証例証論証検証挙証証言あかし裏付け裏打ちしょうする裏付ける明かす証拠立てる

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精選版 日本国語大辞典 「裏書」の意味・読み・例文・類語

うら‐がき【裏書】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 典籍、記録、文書、書画などの裏に、その表記の事柄の証明や説明などのための文字を書くこと。また、その書いたもの。
    1. (イ) 書画の裏に、それが確かな物であることを保証する文句を書くこと。
    2. (ロ) 巻物の裏に、表にもれたことや、心覚え、由緒などを書くこと。綴本(とじほん)の奥書に相当する。
      1. [初出の実例]「此御歌にはじめて御製のよしを知りておどろきおそれて、裏書にさまざまの述懐の詞どもかきつけてよみ侍る」(出典:古今著聞集(1254)五)
    3. (ハ) 料紙を継いで文書や巻物を作る場合、その継ぎ目の裏に、料紙の接続の正しいことを証する文言(文書名や人名、花押)。継目文書。
    4. (ニ) 文書の右端上部の裏側に書かれた文言。文書の内容や文書名(端裏外題)などを記したものだが、多くの場合は、本文と別筆になる。端裏書。
    5. (ホ) 一般に表面の文書を承認、保証すること。
      1. [初出の実例]「於本証文等者、依連券、不副進、且加裏書畢」(出典:高野山文書‐建治元年(1275)一二月一〇日・僧定範田地売券)
    6. (ヘ) 武家時代、進物目録の裏に表書の品物を受領した旨を記すこと(随・貞丈雑記(1784頃))。
    7. (ト) 江戸時代、幕府訴訟法において原告の訴状(目安)の裏に奉行が出廷命令、期日、判決文などを書き、押印して被告に送った召喚命令。
      1. [初出の実例]「若不埒明候はは七日目双方罷出候様裏書可遣候事」(出典:徳川禁令考‐後集・第一・巻八・享保六年(1721))
    8. (チ) 書札礼で、書状の差出人が封紙に二行書きした苗字官名等のうち、折りたたんで裏にあたる部分。封紙裏書。この裏書を書くことを免除されると、書札礼の上で格があがって名誉とされた。⇔上書表書
      1. [初出の実例]「就裏書御免之儀、被御内書候、誠御面目之至候」(出典:上杉家文書‐(永祿二年)(1559)六月二六日・大館晴光副状)
    9. (リ) ( 芝居の巡業先の興行主に差し出す顔付の裏面に記入するところからいう ) =うらかた(裏方)
    10. (ヌ) 手形、小切手などの指図証券を譲渡する方法。ふつう証券の裏書欄に、被裏書人(権利を譲り受ける人)を指定、記入し、裏書人(権利を譲り渡す人)が署名する。
      1. [初出の実例]「示談ととのへば、其証書に裏書して、製造所に渡すなり」(出典:米欧回覧実記(1877)〈久米邦武〉三)
  3. ( 別紙あるいは独立して ) ある事柄を承認、または保証するために書かれた文書。
    1. [初出の実例]「例へば千利休の手沢を経た器であるといふ書付があって〈略〉其の器物もひどく貴くなる。畢竟裏書は鑑定書であるから」(出典:春城随筆(1926)〈市島春城〉趣味談叢)
  4. ある事実を他の面から実証、証明すること。
    1. [初出の実例]「さうだと云へば、父の病気の重いのを裏書(ウラガキ)するやうなものであった」(出典:こゝろ(1914)〈夏目漱石〉九)
  5. 典籍や文書の紙背を利用して書かれた別途の文章、また、その作品。紙背文書

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「裏書」の意味・わかりやすい解説

裏書
うらがき

手形、小切手、貨物引換証、倉庫証券のような指図(さしず)証券に特有な譲渡方法で、証券上の権利者(裏書人)がその証券に所要事項を記載して署名し、これを相手方(被裏書人)に交付してなされる証券行為をいう。通常は証券上の権利の譲渡を目的とする譲渡裏書をさすが、広義では、裏書人の有する証券上の権利、たとえば手形債権を取り立てるため、その旨を付記してなされる取立委任裏書や、債務の担保として証券に質権(しちけん)設定の趣旨を付記してなされる質入裏書を含む。なお、譲渡裏書の場合ではあるが、特殊な裏書として戻(もどし)裏書と期限後裏書がある。戻裏書とは、証券上の債務者、たとえば手形の引受人、振出人、裏書人、保証人等に対し、これらを被裏書人としてなされる裏書である。本来、戻裏書がなされると証券上の権利と義務が同一人に帰属し、混同により債権が消滅するはずであるが(民法520条)、手形の場合、当事者は相互に実質的に利害が対立する関係ではなく、転々流通する手形の性質上、所持人としての地位に個性がないところから、戻裏書の可能性を認め、それによって手形を取得した者はさらに裏書譲渡ができるものとしている(手形法11条3項)。期限後裏書とは、支払拒絶または満期後になされた裏書で、手形の流通証券としての機能が失われているので、これも正常に流通させる必要がないため、この裏書には通常の指名債権譲渡の効力しか認めず、担保的効力も人的抗弁の切断も認められない(手形法20条1項)。

[戸田修三]

裏書の方式

通常は証券の裏面になされるので裏書といわれているが、法律上はかならずしも裏面にする必要はなく、証券の表面、謄本またはそれらの補箋(ほせん)にもなしうる。ただ裏書人の署名のみによって裏書をする場合にはかならず裏面にしなければならない。裏書の方式には記名式裏書と白地(しらじ)式裏書とがある。前者は、被裏書人を指定して裏書人が署名してなされるものであり、後者は、被裏書人を指定しない裏書で、それには、裏書文句を記載して裏書人が署名する場合と、単に裏書人の署名だけでなされる場合とがある。このほか、証券の持参人に対して支払うべき旨を記載した持参人払式裏書の方式もあるが、これには白地式裏書と同一の効力が認められている(手形法11条~20条、小切手法14条~24条ほか)。

[戸田修三]

裏書の効力

譲渡裏書の効力としては次のようなものがある。

(1)権利移転的効力 譲渡裏書により、証券上のいっさいの権利が裏書人から被裏書人に移転する。この効力は手形・小切手の場合にはとくに一般の債権譲渡の場合よりも強力で、債務者が裏書人に対してもっている人的関係に基づく抗弁事由をもって被裏書人に対抗できないという人的抗弁の切断が認められている(手形法17条、小切手法22条)。

(2)担保的効力 裏書人は、証券上の債務の履行がなされない場合に、被裏書人などの後者全員に対し担保責任を負っている。これは証券の流通性を確保するために認められた制度であり、一般に裏書が多いほどその証券の信用性が強化される(手形法15条1項、小切手法18条)。裏書にはこのような効力が認められているために、それを回避する意味で裏書を禁止する場合がある。いわゆる裏書禁止手形(小切手)はその一つであり、手形・小切手を担保の目的のために振り出し、ほかに流通せしめないために用いられる。この場合裏書による譲渡はできないが、指名債権譲渡の方式と効力をもって譲渡することはできる。そのほか、無担保裏書裏書禁止裏書とがある。無担保裏書は、裏書人が裏書をなすにあたり、後者全員に対し担保責任を負担しない旨を記載してなされる裏書である。裏書禁止裏書は、裏書人が裏書をなすにあたり新たな裏書を禁ずる旨を記載してなされるものであるが、この場合は振出人のなす裏書禁止と異なり、単にその裏書人について被裏書人の後者に対する担保責任を免れるという効力を有するにとどまり、直接の被裏書人に対しては担保責任を負う。けっして文字どおり裏書禁止の効力を生ずるものではない。

(3)資格授与的効力 裏書の記載において、裏書の連続のある証券の所持人は、証券上の権利の行使につき、いちおう真の権利者であるとの推定を受ける。証券所持人が権利行使をする場合、つねに実質的な権利を証明しなければならないものとすると、証券を取得するにあたりいちいちその点の調査を必要とすることになり、証券の迅速な流通性を期しえない。そこで、裏書の連続ある証券所持人に権利者としての形式的資格を認め、権利行使を容易にしたのである(手形法16条1項、小切手法19条)。

[戸田修三]

裏書の連続・抹消

証券の記載において、受取人が第一の裏書の裏書人となり、第一の裏書の被裏書人が第二の裏書の裏書人になるというようにして、現在の所持人に至るまで裏書が連続していることを裏書の連続という。たとえば、A→B、B→C、C→Dとなっていれば裏書の連続が認められるが、A→B、C→Dの場合は裏書の連続を欠く。最後の裏書が白地式のときは単なる証券の所持人が権利者であると推定され、また、白地式裏書について他の裏書があるときは、その裏書をなした者が白地式裏書によって証券を取得したものとみなされるから、裏書の連続を欠かないことになる。また、抹消された裏書は、裏書の連続については記載がないものとみなされる。裏書の連続の有無は、証券上の記載から形式的に判断すべきであって、かりに同一人であっても表示上同一人と認めがたい場合には裏書の連続を欠くことになる。裏書の連続のある証券所持人は正当な権利者としての推定を受けるから、権利行使に際し自己の実質的な権利を証明する必要がないし、また、この者に履行をした善意の債務者は、たとえその者が真の権利者でなかったとしても、悪意、重過失がない限り免責される(手形法40条3項)。このほか、裏書の連続ある証券を無権利者から善意かつ無重過失で取得した者は、これを返還する義務を負わないという、善意取得の制度が認められている(手形法16条2項、小切手法21条)。なお、裏書の連続を欠いていても、証券所持人は自己の実質的な権利関係を立証すれば、その権利を行使できることはいうまでもない。

[戸田修三]

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改訂新版 世界大百科事典 「裏書」の意味・わかりやすい解説

裏書 (うらがき)
endorsement

たんに裏書というときは,譲渡裏書を指し,手形や小切手を他人へ譲渡する行為をいう。手形の発祥地であるイタリアで,手形の裏面に譲渡をする旨の記載,署名を行う慣行が生まれ,裏書をさす英語も,イタリア語のin dosso(裏に)に由来する。現在の手形法では,裏書は必ずしも手形の裏面にすることを要求されていないが,実際にはつねに手形の裏面に行われている。裏書は種々の経済的目的のために行われる。所持人がその所持する手形を銀行その他の金融機関あるいは金融業者に裏書譲渡して資金を入手するために行われることが最も多い(手形割引)。また,所持人が,借入金または商取引上の債務の支払いのために,自己の所持する手形を裏書譲渡することもある。債務の支払いのために小切手を譲渡することもあるが,小切手の場合には持参人払式のものとして振り出されているのが普通であり,裏書譲渡されることは日本ではほとんどない。経済的には手形保証(〈保証〉の項目参照)の目的であるが,法形式的には裏書署名をするという特殊な裏書もある(隠れた手形保証)。

裏書の形式には,記名式裏書(正式裏書)と白地式裏書(略式裏書)とがある。裏書としての効力は同じである。記名式裏書は,手形を譲渡しようとする者(裏書人)が,(1)手形の譲受人(被裏書人)の名称を記載し,(2)裏書文句(〈表記金額を下記被裏書人またはその指図人にお支払い下さい〉と書かれるのが普通)を記載し,(3)裏書人が署名することによって行われる。白地式裏書は,裏書人としての署名だけをして,または裏書人としての署名と裏書文句だけを記載して手形を譲受人に交付する方式である。白地式裏書は必ず手形の裏面(手形自体または補箋)にしなければならない(手形法13条2項)。もし手形の表面に白地式裏書をすることを認めると,振出し,保証など他の署名と区別がつかなくなるからである。歴史的にみると,手形制度が生まれた当初は手形を他人に裏書譲渡することは認められなかった。その後,1回に限り裏書譲渡することが認められるようになり,さらに多数回の裏書譲渡が認められるようになって現在にいたっている。現行手形法のもとでは,たとえばAが振り出した手形の受取人がその手形をBに,BがCに,CがDに裏書するというように順々に裏書を続けることができる。このように裏書が何度も続けられると,裏面の余白がなくなる場合がある。そのときは,手形に別の用紙(補箋)を貼付(ちようふ)して裏書を続けることができる。

裏書には三つの特殊な効力が認められる。第1に,手形上の権利がすべて裏書人より被裏書人に移転する(権利移転的効力)。その結果,第2に,裏書の連続する手形の所持人(形式的資格者)は,手形上の権利者と推定される(資格授与的効力)。形式的資格者は,権利者と推定される結果,その者が実質的にも権利者であることを証明しないでも手形上の債務者に対し手形金の支払いを求めうる。また手形債務者は,形式的資格者である所持人に支払えば,たとえその所持人が盗人などのように正当な権利者でなかったときでも,支払いを受けた者が正当な権利者でないことを知らずかつ知らないことに重過失がなかった場合には,その支払いは有効とされる(手形法40条3項)。さらに形式的資格者である所持人から手形の裏書譲渡を受ける者は,たとえその裏書人が盗人などのように無権利者であったとしても,その事実を知らずかつ知らないことに重過失がなかった場合には,完全な手形上の権利者になりうる(手形の善意取得)。第3に,裏書人は,手形に本来支払いをなすべき者(約束手形の振出人,為替手形の支払人・引受人)が支払いを拒絶したときには,支払いをして手形を受け戻す義務がある(担保的効力)。裏書人のこの義務を遡求義務または償還義務と呼ぶ。裏書の特殊な効力として,もう一つ人的抗弁を切断する効力がある。たとえば,商品の買主Aがその売主Bに対する代金支払いのためにAが振出署名をした約束手形をBに交付し,BがこれをCに裏書譲渡したが,Bの納入した商品が欠陥商品だったので売買契約を解除したとする。この場合,AはBが手形金の請求をしたときは契約が解除されたことを理由に支払いを拒むことができるが,CがAに手形金の支払いを求めるときには,原則としてAはCには支払わなければならない。すなわち,AのBに対する契約解除の抗弁(人的抗弁という)は,AからCへは対抗できない(人的抗弁の切断という)。

以上のような裏書の特殊な効力は,手形の流通期限内,すなわち満期前の裏書について認められるものである。手形は満期日(満期が休日のときはこれに次ぐ第1の取引日)およびそれに次ぐ第2取引日内に支払いのため呈示されなければならない(支払呈示期間)。この間の支払呈示に対し支払いがないときは,適法の呈示をしたことおよび支払いがなかったことを証明させるために公証人に支払拒絶証書を作成させることができる。拒絶証書作成後またはその作成期間(支払呈示期間と同じ)経過後の裏書を期限後裏書という。このような時期に手形の裏書譲渡を受ける者を特別に保護する必要はないから,期限後裏書には,善意取得や人的抗弁の切断は認められず,裏書人は担保責任を負わない。

 特殊な裏書の一つとして質入裏書がある。たとえば,BがCから金銭を借り入れ,その返済を担保するために,Aが振り出してBに交付していた約束手形をCに裏書譲渡するような場合をいう。裏書の目的が譲渡でなく借入金返済債務の担保にあり,裏書に〈担保のため〉とか〈質入れのため〉という記載がなされる。したがって,Cは,Bが借入金を返済すれば手形をBに返さなければならず,また,Bが借入金を期日に返済しなければ,CはAから手形金の支払いを受けてBに対する貸金の返済に充当することができる。
遡求権 →手形抗弁 →取立委任裏書
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裏書 (うらがき)

古文書学,書誌学上の用語で,古文書や典籍の料紙の裏面に書かれた記載をいう。典籍においては本文の注釈をはじめとして,補遺,由緒などが書かれる。いっぽう古文書においては,文書の端裏に加えられた端裏書,端裏銘,さらには表の紙面が足りないため本文の続きが裏に書かれた場合(案文に多い)を除いて,表に書かれた本文に対する指示,命令,承認,保証,証明などが記載される。とくに保証,証明のための文章を裏に書くことを〈裏を封ず〉といい,中世において広く行われた(裏封(うらふう))。主として戦国時代の武家文書では,文書を包む封紙を折りたたんだとき,差出書を2行に書くのが普通で,はじめの行の苗字官名などはその裏側に書かれた。これを裏書といい,格式の高い人はそれを省略することが認められた。これを裏書免許という。近世になると,目安すなわち訴状の裏に判決文や召喚期日を書いて遣わすことが行われ,これを目安裏書といった。現在の古文書学では,文書の裏と紙背の区別が厳密に行われず,裏書(裏文書)と紙背文書の概念は混然と用いられている。しかし,表の本文の後から書かれ,それと一体となって文書の機能を果たしているのが裏書(裏文書)である。これに対して,いったんほごとなった料紙の裏を利用して文書を書いた場合(これが表の文書となる),内容的に両者はまったく無関係で,はじめに書かれた文書は裏になるが,これが紙背文書である。
裏判 →紙背文書
執筆者:

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百科事典マイペディア 「裏書」の意味・わかりやすい解説

裏書【うらがき】

手形その他指図(さしず)証券の権利者(裏書人)が普通その裏面に所要事項を記入して署名し相手方に交付する行為。取立委任裏書,質入裏書などもあるが,普通は譲渡裏書をさす。譲渡裏書により証券上の権利は相手方に移転し,裏書の連続する証券の所持人は権利者となり,裏書人は証券上の債務が弁済されないときその代償をする責任を負う。
→関連項目記名式小切手

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「裏書」の解説

裏書
うらがき

文書の効力を確認するために紙背に記された文言。中世の土地証文の場合,作成した当事者または裁判の奉行人が本紙の裏側にその文書が正当あるいは虚偽であることを裏書し,以後の証拠能力を確定した。これを「裏を封ずる」「裏を毀(こぼ)つ」「裏を破る」と称した。文面の案件の一部を抹消する場合は,その箇所の裏に裏書が記され,和与状には訴訟奉行人の裏封が記されるのが一般的。近世の訴訟手続で,奉行所が訴状の裏に何月何日まで出廷すべきことを書き加え押印する目安裏判を裏書といった。

出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「裏書」の意味・わかりやすい解説

裏書
うらがき
endorsement

いわゆる譲渡裏書をさし,指図証券の譲渡を目的とする証券的行為で,証券の受取人またはその後の所持人によってなされる。そのほかに特殊な裏書として取立委任裏書質入れ裏書とがある。通常,単に裏書という場合には譲渡裏書をさす。

裏書
うらがき
endorsement

古文書や記録の料紙の裏面に書かれた記載のことで,由緒,注釈,考勘,補遺,証明,承認などの意味をもった。また美術作品では,巻子,掛幅などの裏面に書かれた表の内容に関する年紀,注釈,証明,修理の履歴などをさしている。

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世界大百科事典(旧版)内の裏書の言及

【為替】より

…支払人はこの割符の裏に,支払日・支払約束文言を記し加判する。受領人は裏書を得た割符によって米銭を受領するという手続であった。支払人が裏書を拒絶した場合,これを〈違割符〉といった。…

【署名】より

…各地で信用を得ていた銀行業者の署名は書記や公証人の認証がなくとも十分に通用したのである。このような手形は14,15世紀に確立し,さらに16,17世紀になると裏書が発生した。こうして署名の社会的重要性はさらに増大した。…

【手形】より

… このように,手形が信用証券として経済上の機能を果たすためには,その流通の円滑性,取引の安全性を確保することが必要であり,法律上も手形には次のような特性が認められる。すなわち,手形の要式は法定されており,その要件を欠く手形は無効であるが,要式を具備していればそれをなすに至った原因関係のいかんにかかわらず,振出し,裏書などの行為自体によって手形上の権利は成立する。その権利内容は手形記載の文言によって決定され,記載文言以外の原因関係や効力からの影響を受けることはない。…

【日次記】より

…藤原師輔の《九条殿遺誡》にも,毎日起床後まず昨日のことを暦記に注すべきこと,要枢の公事については別に詳しく書きしるして後鑑に備うべきことをおしえている。日次記は《御堂関白記》や《水左記》の自筆原本で知られるように,鎌倉時代までは巻子本の具注暦の2~4行の空白に書きつけたものが多く,書ききれないときは裏面に書きつぎ,これを〈裏書〉といった。また藤原宗忠の《中右記》や後崇光院の《看聞日記》のごとく,記主自身が当初の暦記を整理清書した場合も少なくない。…

【付箋】より

…別紙を用いずに本文の対応部分に直接書き入れる場合は〈書込み〉といい,これが本文上欄の余白にあれば頭注,下欄にあれば脚注というが,まとめて注記ともいう。また巻物では,裏面に注記をつけることが多いが,これを〈裏書〉といい,その巻物を折本(おりほん)などに仕立て直す場合に裏書を本文へ書き入れることを〈裏書分注〉という。古文書学をはじめとして,付箋やこれらの注記は,文書や書物の内容がどのように受け取られ,研究されてきたかを知るうえで重要な手がかりとなり,詳細な注解であればそれで一つのテキストとなる。…

※「裏書」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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