改訂新版 世界大百科事典 「生剝」の意味・わかりやすい解説
生剝 (なまはげ)
秋田県男鹿(おが)地方で12月31日の夜(かつては小正月の夜)に行われる民俗行事(国指定重要無形民俗文化財)。本来は小正月に訪れる異形の来訪神の一つで,祝福神的性格をもつものである。村の青年が鬼面をかぶり,蓑と腰巻をつけ,わら沓をはき手に木の刃物を持って,2~5人が一団となって村中の家々を訪れる。〈ウォーウォー,泣ぐ子いねぁがー,怠け嫁,怠け婿いねぁがー〉などといいながら,家の玄関から入り,畳の縁を踏まぬようにして神棚を礼拝,荒々しく部屋中に怒号したあと,家の主人のもてなしを受ける。一年のけがれを払い,新しい年を祝福するのである。
なまはげの名称は,炉にあたってできる火だこの〈なもみ〉をはぎとることで,火だこができるような怠け者を懲らしめるという意味をもつ。秋田県の旧由利郡地方では〈なもみはぎ〉,秋田市では〈やまはげ〉と呼ぶほか,石川県能登半島には〈あまめはぎ〉と呼ぶ同じような行事がある。男鹿半島のなまはげは赤神神社五社堂の行事が半島一円に広がったとも伝えるが,1964年以降は男鹿市が観光化して,新たに2月13~15日の北浦真山(しんざん)神社の柴灯祭にも行っている。
執筆者:山路 興造
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報