かぶり(その他表記)fog

翻訳|fog

改訂新版 世界大百科事典 「かぶり」の意味・わかりやすい解説

かぶり
fog

写真フィルムや印画紙などの感光材料現像した場合,露光を受けなかった部分黒化着色が現れることがあり,これを〈かぶり〉という。感光材料に目的以外の光や放射線を不用意に照射して現像した場合に生ずる黒化を〈かぶり〉ということもあるが,これらは現象としては感光と変りない。感光材料は光,放射線の作用を受けないでも〈かぶり〉を有し,この〈かぶり〉は,感光材料を長期間,とくに高温,高湿度で保存した場合に著しく現れる。また,感光材料を過度に現像した場合,あるいは現像中に感光材料を空気に触れさせた場合にも〈かぶり〉が増大する。このほか,感光材料が硫化水素過酸化水素などの気体,磨いた金属面,木材などに触れた場合にも〈かぶり〉を生ずることがあり,この現象を擬写真効果という。感光材料の〈かぶり〉を防ぐために,写真乳剤や現像液中に臭化カリウムあるいはベンゾトリアゾールのような複素環式化合物をかぶり防止剤として加える。
写真フィルム
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化学辞典 第2版 「かぶり」の解説

かぶり
カブリ
fog

写真感光材料の現像時に,未露光部分にわずかながら現れる写真濃度をいう.一般に,高感度の材料に多く,低感度の材料では少ない,広義には,次の原因による汚れ,または黒化などをいうこともある.
(1)不必要な光が入ったための感光,
(2)不必要な現像反応の進行
(3)処理中の不必要な化学反応による汚れ,
などである.(2)を防ぐには現像速度を適当にするように条件を整えるほか,臭化カリウムやベンゾトリアゾールのようなかぶり防止剤を現像液中に添加して,未露光のハロゲン化銀の反応を抑制する.(3)の例としては,現像液中の成分,たとえば,ヒドロキノン空気酸化による着色物の付着があるが,これを防ぐには,亜硫酸ナトリウムのような弱い還元剤多量,現像液に加えて酸化による着色を抑制する.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

百科事典マイペディア 「かぶり」の意味・わかりやすい解説

カブリ

写真感光材料の光が当たらなかった部分が黒化あるいは着色する現象。長期間高温多湿下での貯蔵,不注意な取扱い,不適当あるいは過度の現像などがおもな原因。
→関連項目現像液DIN感度

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「かぶり」の意味・わかりやすい解説

かぶり
fog

写真感光材料を現像したとき,撮影や焼付けによる正規の露光では感光しないはずの部分に多少の黒化が起る現象。不意の光が入ったために淡く黒化したり,X線を照射されたり,保存が悪く高熱や有害ガス,さらには摩擦による圧力などが感光面に加えられることによって生じる。

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世界大百科事典(旧版)内のかぶりの言及

【霧】より

…霧は地面付近に生じた雲で,空中に浮かんだ無数の微小な水滴(霧粒)からなる。微小水滴は光を散乱,吸収するので,霧の中では見通しが悪くなり,時には数m先が見えなくなることもある。薄い霧では500m~1km先が見えるが,気象観測では見通せる距離(視程)が1km以上の場合はもや(靄)と呼んで霧と区別している。目の高さの水平視程は1km以下であるが,天空がかすかにでも見えるくらいのものを〈低い霧〉,目の高さの水平視程はよくても地面に近いところに霧のある場合を〈地霧〉と呼んでいる。…

【写真フィルム】より

…ネガタイプでは光のあたらなかった部分,ポジタイプでは光の十分にあたった部分でも現像,定着処理したときにいくらか写真濃度を生じ,現像時間を延ばすと濃度が増加する。この写真濃度をかぶりと呼ぶ。直線の傾きをガンマ(γ)と呼び,フィルムの調子の度合(階調,コントラスト)を表す尺度である。…

※「かぶり」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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