改訂新版 世界大百科事典 「かぶり」の意味・わかりやすい解説
かぶり
fog
写真フィルムや印画紙などの感光材料を現像した場合,露光を受けなかった部分に黒化や着色が現れることがあり,これを〈かぶり〉という。感光材料に目的以外の光や放射線を不用意に照射して現像した場合に生ずる黒化を〈かぶり〉ということもあるが,これらは現象としては感光と変りない。感光材料は光,放射線の作用を受けないでも〈かぶり〉を有し,この〈かぶり〉は,感光材料を長期間,とくに高温,高湿度で保存した場合に著しく現れる。また,感光材料を過度に現像した場合,あるいは現像中に感光材料を空気に触れさせた場合にも〈かぶり〉が増大する。このほか,感光材料が硫化水素,過酸化水素などの気体,磨いた金属面,木材などに触れた場合にも〈かぶり〉を生ずることがあり,この現象を擬写真効果という。感光材料の〈かぶり〉を防ぐために,写真乳剤や現像液中に臭化カリウムあるいはベンゾトリアゾールのような複素環式化合物をかぶり防止剤として加える。
→写真フィルム
執筆者:友田 冝忠
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報