生理的黄疸(読み)せいりてきおうだん(その他表記)Physiologic jaundice

六訂版 家庭医学大全科 「生理的黄疸」の解説

生理的黄疸
せいりてきおうだん
Physiologic jaundice
(子どもの病気)

どんな病気か

 黄疸とは、血液中の「ビリルビン」という物質の値の上昇により、皮膚や眼球結膜が黄色に見える状態をいいます。新生児特有の症状のひとつであり、そのほとんどが胎内環境から胎外環境への適応過程にみられる生理現象です。

 最近では、生理的黄疸は、ビリルビンの抗酸化作用により、活性酸素毒性から新生児を守る生理的作用を担っているとも考えられています。

原因は何か

 赤血球が壊れる際に、ヘモグロビン血色素(けっしきそ))からできるビリルビンという物質が黄染(おうせん)の原因です。ビリルビンは肝臓で処理され、腸から便中に排泄されます。新生児は、成人と比べて生理的に多血であるうえ、赤血球の寿命が短いために、ビリルビンの量が多くなります。また、肝臓での処理能力も低く、さらに腸から再吸収されて肝臓にもどる「腸肝循環(ちょうかんじゅんかん)」という現象も盛んです。このため黄疸になりやすいと考えられています。

症状の現れ方

 ほとんどの新生児において生後2~3日に皮膚が黄色に見えるようになり、生後4~5日でピークを迎え、生後1週間を過ぎると自然に消えていきます。

検査と診断

 通常、新生児の黄疸は顔面から始まり、体の中心部そして手足へと強くなっていきます。手のひら足底までもがはっきりと黄色に見える時は、黄疸が強い可能性があり要注意です。このような場合は小児科を受診し、血液中のビリルビン値を調べてもらうほうがよいでしょう。

治療の方法

 生理的なものであり通常は自然に治りますが、黄疸が高度な場合は光線療法という治療を行います。

山崎 肇

出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報

家庭医学館 「生理的黄疸」の解説

せいりてきおうだん【生理的黄疸 Physiological Jaundice of the Newborn】

[どんな病気か]
 新生児にみられる生理的黄疸は、90%前後の新生児におこります。その発生ピークは日本人の場合、日齢5~6で、血中(けっちゅう)の総ビリルビン値が1dℓ中13プラスマイナス4mgに達し、その後減少します。ところが、生後2週間以上黄疸が続くことがあります。これが遷延性(せんえんせい)黄疸(「遷延性黄疸」)です。生理的黄疸は、胎児赤血球(たいじせっけっきゅう)の崩壊や、肝臓へのビリルビン抱合(解毒作用)が出生後数日間は低いことが原因と考えられています。
[治療]
 生理的黄疸のなかでも、血中のビリルビン値が一定の基準を超えて高くなった場合(成熟児では通常、1dℓ中16~18mg以上)は、特発性高(とくはつせいこう)ビリルビン血症(けっしょう)と呼ばれます。
 予防的にからだに光線をあて、ビリルビンの処理を促進する光線療法が行なわれますが、その基準は新生児の日齢、出生体重、呼吸状態などによって異なります。光線療法を行なってもビリルビン値の上昇が止まらない場合には交換輸血が行なわれます(コラム「新生児黄疸」)。

出典 小学館家庭医学館について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「生理的黄疸」の意味・わかりやすい解説

生理的黄疸
せいりてきおうだん

新生児黄疸」のページをご覧ください。

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