日本大百科全書(ニッポニカ) 「ビリルビン」の意味・わかりやすい解説
ビリルビン
びりるびん
bilirubin
胆汁中に含まれる黄色色素で、胆汁色素の主成分。分子式C33H36N4O6、分子量584.67。赤血球寿命は約120日で、古い赤血球は脾臓(ひぞう)・細網内皮系の細胞に破壊され、赤血球内のヘモグロビンが分解される。その産物であるヘムのプロトポルフィリンのα(アルファ)位のメチン橋(-CH=)がヘムオキシゲナーゼによりヒドロキシル化されて開環しビリベルジンとなる。さらにそのメチン橋がビリベルジン還元酵素biliverdin reductaseによって還元されてビリルビンが生成する。
ビリルビンは血清アルブミンと結合し、肝臓に運ばれて肝細胞の洞様毛細血管(類洞)側の細胞膜から取り込まれる。通常、このビリルビンは直接型ビリルビンまたは非抱合型ビリルビンとよばれる。これは水に不溶性であるが、肝細胞のミクロゾームで、プロピオン酸側鎖に主としてグルクロン酸が付加されることで水に可溶となり、胆汁中に排泄(はいせつ)される。これが直接型ビリルビンまたは抱合型ビリルビンとよばれるもので、この抱合を触媒する酵素はウリジン二リン酸uridine diphosphate(UDP)-グルクロニル(またはキシロシル)トランスフェラーゼである。血液中のビリルビン濃度が上昇すると黄疸(おうだん)が生じる。新生児ではこの酵素活性が低く、生理的黄疸が生ずる。また成人の体質性高ビリルビン血症(体質性黄疸)のなかには、この酵素活性が低く軽い黄疸がみられることがある。
ビリルビンは腸内細菌の還元作用を受けてウロビリノゲンおよびステルコビリノゲンとなり、腸肝循環をするが、一部は糞便(ふんべん)や尿中に排泄される。いずれも無色であるが、空気中では酸化され黄褐色ないし黒褐色のウロビリンおよびステルコビリンとなる。
[有馬暉勝・有馬太郎・竹内多美代]
『南部勝司著『黄疸とその臨床』(1987・新興医学出版社)』▽『サンジブ・チョプラ著、谷川久一・岡田吉博・橋本直明訳、織田敏次監訳『レジデントのための肝臓病学』(1989・メディカル・サイエンス・インターナショナル)』▽『日本生化学会編『新・生化学実験講座15 代謝異常』(1992・東京化学同人)』▽『J・エドワード・バーク編著、土屋雅春監訳『ボッカス 消化器病学5 肝臓』(1992・西村書店)』▽『橋都浩平・岩中督編『小児外科学』新版(1994・診断と治療社)』▽『ポルフィリン研究会編『ポルフィリン・ヘムの生命科学』(1995・東京化学同人)』