内科学 第10版 「男性化副腎腫瘍」の解説
男性化副腎腫瘍(副腎皮質)
男性ホルモンを過剰産生する副腎皮質腫瘍(腺腫および癌)で,小児において性早熟,女性では男性化をきたす.
臨床症状
副腎腫瘍によるアンドロゲンの過剰産生による臨床徴候は女児では外性器の男性化,男児では成人様外性器をきたす.成長は促進するが骨端線も早期に閉鎖する.思春期以降の女性では月経不順,多毛,痤瘡の出現と,筋肉,陰毛,音声の男性化を生じる.男性では精巣の萎縮と精子形成不全を伴う.女性では男性化に先行して乳房の縮小や女性的体型が消失することに注意する. 男性化腫瘍によるアンドロゲン過剰症状は比較的急速に進行する.
検査成績
血中のアンドロゲン(DHEA,DHEA-S,アンドロステンジオン,テストステロン),尿中17-ケトステロイド(KS)の増加がみられる.テストステロン産生副腎腫瘍はきわめてまれである.テストステロンはDHEA,アンドロステロンが末梢組織の17β-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼによって生成される.一般に副腎癌では3β-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ活性が低下しているためDHEA,DHEA-Sが増加するが男性化は伴わない.
鑑別診断
女性では卵巣のアンドロゲン産生腫瘍,PCOS(多囊胞性卵巣症候群),21-ヒドロキシラーゼ欠損による先天性副腎過形成などとの鑑別が重要である.[宮森 勇]
出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報