日本大百科全書(ニッポニカ) 「副腎腫瘍」の意味・わかりやすい解説
副腎腫瘍
ふくじんしゅよう
副腎皮質からは3種類、副腎髄質からは2種類のホルモンが分泌されている。これらホルモンを分泌する細胞が異常に増殖して腫瘍となったもの(ホルモン産生腫瘍)とホルモン産生のないホルモン非産生腫瘍がある。副腎皮質からはアルドステロン産生腫瘍(コーン症候群)やコルチゾール産生腫瘍(クッシング症候群)ができるほか、各ホルモンの産生過程でつくられる物質を多く分泌する腫瘍(デオキシコルチコステロン産生腫瘍)、男性または女性ホルモンを分泌する腫瘍(副腎皮質男性化腫瘍または副腎皮質女性化腫瘍)もある。副腎髄質からアドレナリン、ノルアドレナリンを過剰に分泌する腫瘍は、褐色細胞腫という。これらの腫瘍は手術で摘出すれば症状が改善されるものが多い。
近年、腹部CT(コンピュータ断層撮影)の機会が多くなり、その際、偶然に副腎腫瘍が発見されることがある(副腎偶発腫とよんでいる)。このような腫瘍は微量なホルモンを産生する場合がある。ホルモンを産生していなくとも4センチメートル以上の大きさのものは、将来癌(がん)に移行する可能性があるため、手術で摘出してしまうことを奨励している。
[高野加寿恵]