疲労骨折とは、通常1回の負荷だけでは骨折を起こさない程度の外力が、正常な骨の同一部位に反復して加わることによって骨組織の結合の中断を起こし、最後には明らかな骨折を生じるものとされています。
スポーツによる疲労骨折の発生部位は疾走やジャンプを繰り返すスポーツ種目における下肢の
主な症状は罹患部の疼痛ですが、その診断は必ずしも容易ではありません。疲労骨折の初期には、単純X線写真には異常所見が認められないことが多いからです。したがって医師は疲労骨折を疑ったら、定期的にX線写真をとって経過を観察します。
また、有用な補助検査として骨シンチグラフィやMRI検査を行うこともあります。このうち骨シンチグラフィは単純X線写真では認められない異常も100%映し出しますので、疲労骨折診断の決め手とされています。
疲労骨折の治療は通常保存的に行われます。
ただし、疲労骨折のなかには難治性のものもあり、こうした例では手術を行うこともあります。
ランニングやジャンプなどのスポーツ活動を行うことにより、骨の同じところにストレスが繰り返しかかって内部に微細な骨折を生じる場合があります。運動を続けていると、それが修復する前に次の微細な骨折が生じ、ついには骨全体の骨折に至ることがあり、これを疲労骨折といいます。下腿の
激しいトレーニングをしている運動部の学生や社会人に多く発症します。明らかな外傷がなく、運動時に局所に著しい痛みを感じる場合は本症を疑います。
一般の骨折のように、皮下出血や著しい
初期にはX線像でわからないこともありますが、発症から2~6週間すると骨形成や骨硬化像が出現して診断がつきます。骨シンチグラフィーやMRIでは、初期の病変でも診断をつけることができます。
ランニングによる下腿や第2~4中足骨の疲労骨折では、通常1~2カ月程度、スポーツ活動を休止することにより治癒します。
しかし、跳躍競技で生じた下腿の疲労骨折や第5中足骨疲労骨折(ジョーンズ骨折)、舟状骨疲労骨折では治療に長期間を必要とし、時には手術治療が必要になることもあります。実際には試合やトレーニングの日程によって活動を休止できない場合も多く、慢性化することがあります。
骨折部に負担のかかるスポーツ活動をただちに中止し、活動内容を変更します。水中トレーニングやエアロバイクなど、骨折部に負担の少ない方法を試みます。
田中 康仁
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報
金属材料の疲労折損と同様な現象が骨にもみられ、持続性の反復外力によって骨組織が破綻(はたん)し骨折するものを疲労骨折という。かつては軍隊で新兵の猛訓練により潜行性の骨折が中足骨などにみられ、行軍骨折とか足腫(そくしゅ)とよばれていたが、近年ではスポーツ医学の面から注目されている。すなわち、トレーニングの兎(うさぎ)跳びによる腓骨(ひこつ)の疲労骨折は代表的なものである。
発生部位としては下腿(かたい)の脛骨(けいこつ)や腓骨にもっとも多く、第2および第3中足骨にもしばしばみられ、おもにランニングやジャンプなどの反復練習による。また、バレーボールや野球などでは上肢の尺骨中央部から下方3分の1に多くみられ、ゴルフスウィングによる肋骨(ろっこつ)や第7頸椎棘(けいついきょく)突起の骨折などもよく知られている。
最低1か月から2か月間のスポーツ活動の中止が必要である。予防としては、持続する反復運動の練習計画を改め、バランスのとれた筋肉トレーニングや年齢および体力に見合ったトレーニング方法を検討する。
[永井 隆]
…骨折の大部分は,正常な骨にその抵抗力以上の外力が加わって起こる外傷性骨折である。一回一回の外力はたとえ軽微であっても骨の同一部位に繰り返し加えられると,金属の疲労現象のようにその部に骨折が生じる場合があり,これを疲労骨折fatigue fractureという。また骨自体になんらかの病変があって,正常な骨であれば骨折しない程度の外力によって骨折を生じる場合を病的骨折pathological fractureという。…
※「疲労骨折」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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