直裰(読み)じきとつ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「直裰」の意味・わかりやすい解説

直裰
じきとつ

法衣(ほうえ)のこと。俗に「ころも」と称される。上半身を覆う偏衫(へんさん)と腰より下をまとう裙子(くんず)を、ただちに綴じたものであるため、直綴とも書く。インドの律蔵ではみられず、中国の南宋(なんそう)代に初めてつくられた。初めは衣(ころも)も袈裟(けさ)も同じであったが、のちに両者を区別し、三衣(さんえ)(僧伽梨衣(そうぎゃりえ)、鬱多羅僧衣(うったらそうえ)、安陀会(あんだえ))を袈裟、直裰を「ころも」と称した。道元(どうげん)の『宝慶記(ほうきょうき)』によれば、南宋代に盛んに流行していたことが明らかである。しかし、古風を慕うならば、偏衫、裙子を着けよと教えている。江戸時代に至り、各宗で用いられる常用服となった。

[川口高風]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

今日のキーワード

106万円の壁

会社員に扶養されるパートら短時間労働者は年収106万円以上になると厚生年金保険料などの負担が生じて手取りが減る。将来の年金額は手厚くなるが、働き控えを招く「壁」とされ、企業の人手不足の要因となる。厚...

106万円の壁の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android