日本大百科全書(ニッポニカ) 「相対所得仮説」の意味・わかりやすい解説
相対所得仮説
そうたいしょとくかせつ
relative income hypothesis
F・モディリアーニおよびJ・S・デューゼンベリーが長期および短期の消費関数について統一的な説明を行った際に用いた仮説。
ケインズによって経済学に導入された消費関数は、消費性向は所得の絶対水準に依存するという絶対所得仮説absolute income hypothesisを基礎としていたが、相対所得仮説においては、消費性向は絶対所得水準だけでなく、過去の最高所得にも依存すると主張する。これは、消費者が過去に達成した所得の最高時における生活習慣を急に変えることができず、絶対所得が低下した場合にもそれに比例して消費水準を下げようとしないことに着目し、このような消費慣習の惰性が消費性向の決定要因として重要であるというものである。とくに景気後退期には、過去の最高所得は消費水準の低下に歯止めをかける「歯止め効果」の働きをもつといわれる。
[畑中康一]