日本大百科全書(ニッポニカ) 「モディリアーニ」の意味・わかりやすい解説
モディリアーニ(Franco Modigliani)
もでぃりあーに
Franco Modigliani
(1918―2003)
アメリカの経済学者。J・トービンと並ぶアメリカの代表的なケインズ学派。ユダヤ人の小児科医の息子としてイタリアのローマに生まれる。ローマ大学で法学の博士号を1939年に取得したが、イタリアでも反ユダヤ主義が強まったため、アメリカに移住した。1942年からコロンビア大学バーナード・カレッジ、ニュースクール・フォア・ソーシャル・リサーチなどで教職を務めたのち、1944年ニュースクール・フォア・ソーシャル・リサーチで博士号を取得した。1949年イリノイ大学の準教授となり、1952年カーネギー工科大学(現カーネギー・メロン大学)教授、1960年にノースウェスタン大学教授、1962年にマサチューセッツ工科大学(MIT)の教授となった。なお、1946年にアメリカの市民権を取得している。
モディリアーニは、ケインズ学派のマクロ経済学に興味をいだいた。消費行動のマクロ分析を研究し、ケインズの消費関数を発展させ、「ライフ・サイクル仮説」を提唱した。この仮説は、個人の消費行動が人生の各段階により異なる(青・壮年期は貯蓄し、退職後の老年期に貯蓄を取り崩して消費する)ことに注目して理論を構成したものであり、消費行動は単にそのときの所得により決定されるのではなく、生涯所得により決定されるとした。またM・H・ミラーと共同で、企業の価値が資本構成や配当政策に依存せず、投資計画は資本コストに無関係で決定されるとする企業金融に関するMM理論を確立した。
1985年に「ライフ・サイクル仮説と金融市場の分析」によって、ノーベル経済学賞を受賞した。
[金子邦彦]
『ジェームス・K・ガルブレイス、ウィリアム・A・ダリティ・ジュニア著、塚原康博他訳『現代マクロ経済学』(1998・TBSブリタニカ)』▽『マリル・ハート・マッカーティ著、田中浩子訳『ノーベル賞経済学者に学ぶ現代経済思想』(2002・日経BP社)』