改訂新版 世界大百科事典 「真空天秤」の意味・わかりやすい解説
真空天秤 (しんくうてんびん)
vacuum balance
真空容器にてんびんを納めて排気し,容器外部からすべてのてんびん操作ができる装置をいう。空気中で測定することによる外界からの影響を除く必要のある質量測定に用いる。てんびんには従来の機械式の手動てんびん,直示てんびんのほか,最近では遠隔操作の容易な電気てんびんが多く使用され,秤量は質量標準の研究に用いる数kgから物性研究用の数mgに及ぶ。容器は耐真空構造のガラス製の鐘,あるいはのぞき窓付き金属製容器で,排気には真空ポンプを使用する。真空てんびんの精密さは通常の精密てんびんとほぼ同一である。使用にあたり静電気などによる帯電の影響を受けやすいので注意が必要。真空下での秤量は浮力の補正を必要とせず高精度な質量測定を可能にするほか,酸化をきらう物質の高温下での測定に効果がある。物質の熱的変化を調べる熱てんびん,物質の熱的性質を調べる示差熱てんびんは真空てんびんを応用したものである。
執筆者:小林 好夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報